スパコン「富岳」の五輪“感染”シミュが炎上したワケ(3/3 ページ)
理化学研究所のスーパーコンピュータ「富岳」を使った、国立競技場内での感染シミュレーションの結果に“ツッコミ”が殺到した。大会の開幕を前に、富岳の結果が炎上した理由を考察する。
Jリーグの取り組みと富岳の試算結果との共通項
同じサッカーでも日本国内では状況が大きく異なる。Jリーグは2020年に開催した全試合のうち、94%に当たる約1000試合を有観客で開催したが、これまで一度も集団感染は発生していない。
Jリーグでは、換気状態を測定するため二酸化炭素濃度の計測器の導入や観客数の制限、間隔を空けての着席など感染対策を徹底した上で、一部の試合ではAIの画像認識技術により、マスク未着用者を特定するカメラを導入。試合中のマスクの平均着用率は95.2%を記録した。ハーフタイム中は着用率が下がることから、スタジアム内の注意喚起を強化した他、人流の混雑具合を計測し、時間差を設けての分散退場も導入した。
Jリーグの取り組みと富岳のシミュレーション結果に共通するのは、マスク着用、人数制限、密回避の3条件を満たした上で試合を屋外で開催した場合、一定の感染対策効果があるという点だ。
全ての会場に適用できるわけではないものの、有観客開催時に最低限必要な条件を科学的根拠として導き出したという点では、富岳のシミュレーション結果には意義があるという見方もあるだろう。
炎上の本質は“富岳ブランド”の悪用か
今回の一連の動きを改めて振り返ると、富岳の試算結果が物議を醸した本質は、“富岳ブランド”を悪用した点にあるのではないか。
7月に入って以降、都内の新規陽性者数は増加傾向にあり、国内外から開催中止の声も出る中、文科省が発表した富岳のシミュレーション結果。
当時は無観客開催の決定前だったとはいえ、有観客開催を実現するための“科学的”根拠をひねり出すために、日本が誇る世界一のスパコンが体よく利用されたと人々には映ったのではないか。スパコンなどの優れたテクノロジーは、非現実的な何かの権威化に使うべきものではないはずだ。
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