日本の製粉大手に「前例ない」大規模攻撃 大量データ暗号化 起動不能、バックアップもダメで「復旧困難」
「システムの起動そのものが不可能で、データの復旧の手段はない」――製粉大手のニップンに、前例のない規模のサイバー攻撃。一度の攻撃で大量のデータが同時多発的に暗号化され、決算作業もできなくなった。
「システムの起動そのものが不可能で、データ復旧の手段はない」――製粉大手のニップン(東証一部上場)は8月16日、7月7日に受けたサイバー攻撃の詳細と影響を明らかにした。
グループ会社を含むサーバの大半が同時攻撃を受け、バックアップを含む大量のデータが暗号化されて復旧不能に。外部専門家に「前例のない規模」と報告を受けたという。
財務システムも被害を受け、早期の復旧が困難なため、8月5日に発表予定だった2021年4〜6月期の決算は、約3カ月延期。8月16日が提出期限だった四半期報告書の提出も、11月15日に延期する。
サイバー攻撃を受けたのは7月7日未明。グループの情報ネットワークのサーバや端末が同時多発的な攻撃を受け、大量のファイルが暗号化された。
ニップン単体の財務・販売管理データを保管しているファイルサーバに加え、グループ企業で同じ販売管理システムを使っていた11社と、同じ財務会計システムを利用していた26社にも被害が及んだという。
同社は全サーバを停止し、ネットワークを遮断したが、これにより、全ての社内システムや共有ファイルサーバにアクセスができなくなった。
外部専門家に調査を依頼したところ、(1)被害を受けたシステムすべてで、サーバのボリュームまたはサーバの内部に格納されたファイルの大部分が暗号化され、システムの起動そのものが不可能、(2)サーバの早期復旧に有効な技術的手段が確認できない、(3)データのバックアップを管理しているサーバも同じ状況であり、データの復旧の有効的な手段が「ない」と報告を受けたという。
さらに、「これほど広範囲に影響を及ぼす事案は例がなく、復旧、安全性の構築までには相応の時間と労力が必要」との報告もあった。
事業継続計画(BCP)は事前に策定していたが、拠点単位のシステム障害を想定しており、「グループ会社を含むサーバの大半が一度に同時攻撃を受ける」という今回の事態は想定外。オンラインバックアップも保存していたが、それも同時に被害にあうなど「BCPで想定していた事態を大きく上回る状況」だと説明している。
同社は現在、対策本部を設置し、原因の究明や二次被害の抑止策、情報システムの復旧、再発防止策を検討中。システムの復旧には、サーバの再構築やネットワーク環境の見直し、会計データの再取得などに「相応の期間」を要するとしている。
4〜6月期の決算作業に向け、財務会計システムは新たに導入し直す予定。新システムは9月上旬ごろに利用できる見通しだ。連結会計システムも新規導入し、決算作業ができる体制を整える。決算に必要なデータのうち、容易に復元・収集できないものについては、各事業所に資料作成を依頼しているという。
工場などは正常な操業を続けており、製品の供給は「これまで通り維持している」と説明している。
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