衛星データ基盤「Tellus」、データの売買に対応 「ネット業界のビジネススキームを宇宙産業に」
さくらインターネットは10月26日、人工衛星が取得したデータをクラウド上で分析できるプラットフォーム「Tellus」(テル―ス)のVer.3.0を発表。新機能として衛星データを売買機能を追加する。
さくらインターネットは10月26日、人工衛星が取得したデータをクラウド上で分析できる衛星データ基盤「Tellus」を「Ver.3.0」にアップデートしたと発表した。新機能として衛星データを売買機能を追加する。同社の田中邦裕代表は、「ネット業界のビジネススキームを宇宙産業でも実現したい」と意気込みを話す。
Tellusは、さくらインターネットが経済産業省の受託事業として、開発・運用に取り組む衛星データ基盤。衛星データやそれを扱うツールの他、気象/人流などの地上データを順次搭載している。2019年2月から提供を始めており、26日時点でサービス登録者数は2万4000人を超える。
Ver.3.0では、追加機能の「Tellus Satellite Data Traveler」により、ユーザーは衛星のセンサーの種類や時刻、面積単位で特定の地域を指定して検索することで、データの購入/保存ができるようになる。データを販売するのは、衛星データプロバイダーである日本スペースイメージング、日本地球観測衛星サービス、パスコの3社。価格は数万から数十万円。
「生データを提供するだけでなく、コンピューティング基盤自体もTellusで負担し、最適な加工をした上で提供する。ここまで提供してこそ、クラウドベンダーでありネット企業である、われわれがTellusを提供する真の意味だ」とさくらインターネットの田中代表は説明する。
田中代表は、「当初は、国からの受注事業でありながら、外注をしてTellus1.0を立ち上げた。しかし、それでは顧客のニーズを捉えきれず、いかに国の事業であっても、ローンチ後に育てていく重要性を改めて感じた。3.0は自社開発したが、現時点で完成ではなく、ここからがスタート。さらに良くするために開発を進める」とここまでの開発経緯を話す。
「これから、われわれが一番やらなくてはいけないのは、システムではなく顧客の開拓。宇宙産業には現在、約1万人の方々が従事していると聞くがそれ以上の人に使ってもらわなければいけない。現在、Tellusでは2万4000人の方々に利用してもらっているが、この先もさまざまな施策を通して顧客を増やし、ネット業界のようなビジネススキームを衛星データ事業でも実現したい」とこの先の展望の語った。
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