厳しい電力需給続く 今すぐできる節電・寒さ対策を実践しよう:デジタル防災を始めよう
連載「デジタル防災を始めよう」ではこれまで、停電時や寒さの対策について報じてきたが、電力ひっ迫と寒波がダブルでやってきた現在の状況に対応するための方法について改めてまとめた。
3月21日、東京電力管内の電力需給が厳しい状況にあるとして、政府として初の「電力需要逼迫警報」が発表された。同日正午過ぎには東北電力管内を対象にするなどの第2報が発表されるなど、依然電力需給がひっ迫している。
ニュースでも節電が呼び掛けられ、TVでは画面がL字で情報が流れる非常時対応となった。
3月16日に発生した福島沖地震の影響で火力発電所が停止、稼働再開できていない状態での急激な寒波の到来など、電力需要が急増しており、供給が追い付いていないことが理由とされる。
すでに東京電力パワーグリッドの「でんき予報」では107%越えを記録した時間帯もある。需要を上回る電力は、揚水式発電によってまかなわれているが、これから先、需要のピークを迎える午後6時以降で需要が供給を上回り続けると、午後8時過ぎには揚水式発電の運転が停止し、200〜300万軒規模の停電が発生する恐れがあるとしている。
ただし、電力需要に対応できなくなったとしても大規模なブラックアウト(広域停電)が起こる可能性は低く、変電所に設置されている安全装置である「UFR」(周波数低下リレー)作動による局所的な送電停止による停電(200〜300万軒規模)で済みそうではある。
アウトドア、防災の知識を総動員して省エネを実施しよう
呼び掛けでは、暖房の設定温度を20度にするとアナウンスされているが、それではさすがに暖かさを感じにくい。そこで活用できるのが、この連載のいきなりの大雪、今すぐできる積雪・寒さ対策で紹介したレイヤリング(重ね着)だ。
自宅でリモートワークをしていると、ついつい裸足で過ごしてしまうなど薄着、軽装になりやすいが、厚手の靴下を履いたり、タイツ、ロングTシャツなど防寒対策をしたい。
レイヤリングと言っても、ただ闇雲に重ね着すればいいというわけではない。以前紹介した通り、肌に直接触れるインナーは吸水速乾のもので肌を湿らせないように心がけ、ミドルレイヤーには汗など水分を外に発散させつつ、熱を溜め込むダウンやハイロフトの起毛フリースなど、外出の際は風を防ぎ熱を奪われないようにする防水、防風のアウターを羽織るのがベストだ。
「君はエントロピーって言う言葉を知ってるかい?」複数の方法で暖を取ろう
暖房は、その熱で空気を温め空間そのものを暖かくするが、そのために多くのエネルギーを必要とする。一方で、一杯のお茶飲む、カイロを握る、要所に貼るなどすると全身が温かくなる。体の一部分を温めることで、血液が温められて全身を巡って全身が温まるからだ。
レイヤリングで暖かさを維持する工夫をしたら、温かい飲み物やカイロなどで部分的に温めることも併用すれば最小限のエネルギーで温かさを維持することが可能だ。
使い捨てカイロは、シーズン中毎日使うとたくさんの量が必要だが、ハクキンカイやジッポーハンドウォーマーなど繰り返し使えるカイロであれば、エコで長く使うことができる。
燃料(エネルギー)のダイバーシティを
現代生活は、多くのエネルギーを電気に頼っている。オール電化住宅では、料理のコンロもIH、温水供給も電気で沸かすなど大量の電力を消費する。防災面の一面ではガス管破損による火災やガス中毒事故が防げたり、震災後のエネルギー復旧が早いなどのメリットもあるが、こういった電力ひっ迫の際には電力のみに頼った状況が裏目に出てしまう。
筆者の住宅にはゴミ焼却の排熱を利用した温水供給があり、お湯だけでなく暖房にも活用されるのでエアコンを使用せずにこちらを使用して乗り切っている。
使用しない部屋の電気は消して省エネを心掛けている。仕事部屋では、かつてPFUより発売されていたスマホ用スキャンアタッチメント「SnapLite」をLEDデスクライトとして活用し、省エネをしつつ明かりを得ている。
カセットガスコンロなどはほとんどの家にあるかと思う。IHしかない家では、今日だけでもカセットコンロで料理をしてみるなど、節電クッキングを試してみてはどうだろうか? 電気ポットもお湯を沸かしたあとはステンレスボトルに入れて保温機能を使用しない、炊飯器の使用を控えてメスティン炊飯を試すなど、今できる「防災スタイル」をこの機会に試してみてはどうだろうか。
室内でも使用できるカセットガス式のヒーターもある。防災用やガレージ作業用などで持っていたという人は、作動点検も兼ねて今日の暖房として使ってみるのも良いかもしれない。
それでも停電になってしまったら
節電を心掛けても停電が起こってしまう可能性はある。先日の地震の直後はUFR作動による停電が広範囲で発生した。
夜間や明け方に停電になってしまうと明かりがなくなるのが困る。連載初回で紹介したセンサーライトなどが備わっていれば、突然の停電でも最小限の明かりは得られる。手元にスマートフォンがあればLEDライトを点灯させることで応急の懐中電灯として使うことができる。普段から使っている人も多いと思うが、念のために使い方を確認しておこう。
モバイルバッテリーの残量のチェック、充電(蓄電)を確認しておこう。今やるべきことではないが、昨夜のうちにバッテリー機器の充電を行なっておくとよかった。モバイルバッテリーは、予備も含めて複数個持っていれば、灯りやスマホやタブレットの充電だけでなく、USBヒーター、USB〇〇など、USBから給電する機器があれば当座の対応は可能だ。
とはいえ、USB給電で必要電力をまかなうのはなかなか大変で、普通のモバイルバッテリーだとすぐになくなってしまったり、必要なパワーが得られない(明るさが足りない、熱量が不足する)などもありえる。
スマホや小型のLEDライトの光源は小さくて部屋を照らす灯りとしては不足することもあるが、レジ袋をかぶせたり、水を入れたペットボトルを光源の上に乗せたり、防水ライトであればペットボトルの中に沈めたりすることで光を拡散させて広域を照らすこともできる。
喉元過ぎても、熱さを忘れず、次の備えを
寒波が過ぎ去ったら半年後には暑い夏が訪れて電力需要が高まる。普通に生活していても需給のひっ迫で電力不足、停電が起こる恐れがある。落雷などの季節的な災害、地震などの突発的な災害が起こらないとも限らない。
今回の電力ひっ迫警報を乗り切ったとしても、「防災スタイル」を心がけたい。
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