鳥 vs. AI ブドウ園を守るために飛べ、ドローン 長野県の企業が取り組む全自動鳥害防止システム:第31回 Japan IT Week 春
ブドウ園を鳥から守るため、ドローンを使った全自動鳥害防止システムを通信機器の開発などを手掛けるマリモ電子工業が開発している。同社の関純常務取締役は「開発のポイントは、鳥を検出してからいかに速く、現場へドローンを出動させるか」と話す。
ワインの材料となるブドウの産地として知られる長野県。このブドウの生産は、鳥による被害に長年悩まされてきた。長野県では、ワインに換算して年間で約300万円相当のブドウが鳥害によって無駄になっているという。この鳥害をドローンで防ごうとするシステムが、IT展示会「第31回Japan IT Week 春」(東京ビッグサイト、4月6日〜8日)で展示されている。
システムを作っているのは、通信機器の開発などを手掛けるマリモ電子工業(長野県上田市)。同社の関純常務取締役は「開発のポイントは、鳥を検出してからいかに速く、現場へドローンを出動させるか」と話す。
システムは、ブドウ園に仕掛けた定点カメラで鳥の姿を捉え、その位置情報をドローンに送信。ドローンを起動し、送信された位置情報に向かわせ、音やその動きで鳥を追い払う仕組みだ。一連の流れを自動化すべく、同社は信州大学や岐阜大学と共同で開発に取り組んでいる。
このシステムの特徴は、ドローンが起動するまでのスピードにあるという。関さんは「これまでは鳥の画像データをドローンに送信する方法を採用し、開発を進めていた。しかしこの方法は、画像の処理に時間がかかり、現場に着くまでにラグがあった。そこで画像ではなく、座標データのみを送ることで、データ処理を高速化し、ラグを減らすことに成功した」と説明する。
ブドウ農園以外にも「航空機と鳥が衝突する事故『バードストライク』を防ぐために空港などへの導入にも効果があるのでは」と関さん。
同社は今後、鳥の行動をパターン化し、より効率的に追い払うためのドローンの動きを研究していく他、鳥以外にもイノシシや鹿、猿などの哺乳類が与える獣害対策にも応用できるよう、システムを改良していく方針だ。ただし実用化の見通しはまだ立っていないという。
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