SaaSビジネスにおけるユーザーコミュニティーの真価 解約率の改善にはつながる? 継続率99%超を保つSmartHRの考え(1/2 ページ)
ユーザーコミュニティー施策に取り組むSmartHR。同社が期待するユーザーコミュニティー活性化の効果とは。専門チームのメンバーに聞く。
SaaSビジネスの中でも重要な指標である解約率(チャーンレート)。サービスの成長には3%以下を保つべきといわれるが、人事向けSaaSを提供するSmartHRはこの指標を継続して1%以下に抑えている。
過去の記事ではSmartHRのCEOやカスタマーサクセス(CS)部門に、指標を追う上での戦略を聞いた。しかし同社は、他にも指標の維持・改善を意識した取り組みを進めているという。その一つがユーザーコミュニティーの運営だ。
SmartHRは2021年7月、ユーザーコミュニティーの企画・運営に特化した組織「アドボカシーユニット」を設立。オンラインイベントなどを開催し、ユーザーコミュニティーの盛り上げに取り組んでいる。サービスを使い慣れたユーザーがそうでないユーザーに使い方を教えるなど、すでにプラスの効果も出ているという。
ただし現状では、イベントの開催などによる解約率や売り上げへの影響はまだ検証している最中だ。SmartHRはユーザーコミュニティーの運営を通して、どんな価値を生み出そうとしているのか。アドボカシーユニットの大久保志朗さんと篠原恵利子さんに聞いた。
「ユーザーの声が欲しい」 コミュニティー注力の背景
SmartHRのアドボカシーユニットは、同社のブランドマーケティング部門から、ユーザー向けの年次イベント「PARK」の運営を承継する形で生まれた組織だ。業務内容はユーザーコミュニティー向けイベントの企画・運営などで、今後スタート予定のオンラインユーザーコミュニティーに関する業務も手掛けている。
もともとはSmartHRのオウンドメディアで編集者として働いていた大久保さんと、カスタマーサクセスとして働いていた篠原さんが、それぞれ別の課題感からユーザーコミュニティーの重要性を感じたことをきっかけに生まれた組織という。
大久保さんが感じていたのは、ユーザー製コンテンツの必要性だ。
「事例取材などでユーザーと会う中で『社内に相談できる人がいない』といった声を聞くことが多かった。当社のマーケティングという視点から見ても、サービスの拡大につれてリード獲得の難易度が上がるという課題を抱えており、ユーザーが作るコンテンツや顧客の意見の重要性がより高まっていた。ユーザーの声を活用し、透明性のあるマーケティングをしていくには、コミュニティーが大事だと考えた」(大久保さん)
一方の篠原さんは、サービス拡大に伴って増加するCS部門への負担に課題を感じていたという。
「ユーザー数や機能が拡大する一方で、CSは1人当たりが担当できる数に限界がある。他社の取り組みやカスタマイズの事例についてユーザーから聞かれることも多かったが、CSだけでは、全ての状況を把握しきることはできない。スケーラブルなCSという意味でも、ユーザー同士で問題解決し、成功につなげられるような場が求められていた」(篠原さん)
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