国立天文台が初のクラファン実施 ブラックホール研究に向け目標1000万円
国立天文台水沢VLBI観測所(岩手県奥州市)は、ブラックホール研究の支援金を募るクラウドファンディングを始めた。クラウドファンディングサイト「READYFOR」で6月17日まで募集し、目標支援額は1000万円。目的は、国の予算以外の研究費の確保としている。
国立天文台水沢VLBI観測所(岩手県奥州市)は4月20日、ブラックホール研究の支援金を募るクラウドファンディングを始めた。クラウドファンディングサイト「READYFOR」で6月17日まで募集する。目標支援額は1000万円。国の予算以外でブラックホール研究の研究費用を確保するのが目的としている。
同機関は2019年に、人類史上初のブラックホールの影の撮影に成功するなど、天文学上で大きな成果を上げている天文台。現在は、ブラックホールから噴出されるジェットの仕組み解明など、ブラックホールの活動性についての研究を進めている。
プロジェクトは、支援額が目標に達した時点で成立するAll or Nothing(達成後支援型)形式で、達成できなかった場合は支援者に全額返金される。支援金の用途は、若手研究者の活動支援を中心に、同機関の活動運営費として活用するという。支援者には定期的に活動報告を配信する。
国からの予算の伸びは頭打ち、若手研究者に大きな影響
同機関は「国立天文台は大学共同利用研究機関であるため、予算は大型装置を維持することが最優先される」と事情を話す。予算が限られると若手研究者の雇用などの予算が大きな影響を受けるため、研究費用を確保するための一つの方策として、クラウドファンディングに着手したとしている。
同機関によると、天文学の研究はすぐに実用化に向けた応用が期待できるものではないため、これまでは国の予算に頼って発展してきたという。
しかし、国が出す予算の伸びは頭打ちになっているという。少子化などにより経済成長が停滞している影響で、天文学を含む基礎科学への予算は、今後さらに厳しくなると、同機関は予想している。同機関も予算削減の影響で、人員削減や若手研究者のためのポストの消失、若手研究者や大学院生の研究経費減など、影響が生じているという。
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