社内外に潜む“お邪魔虫”の正体 クラウド活用できない企業によくある4つの問題点(2/3 ページ)
クラウド活用が進まない企業は、どんな問題点を抱えているのか。“オンプレ思考”から脱却することの必要性を解説した前編に続き、後編では協力しているベンダーや社内の対立など、組織に起因するケースについて説明する。
「クラウドにすると必ずコストが安くなる」は幻想
もう一つ、クラウド活用を妨げるのは「クラウドにすると必ずコストが安くなる」という勘違いだ。そもそもクラウドのメリットは調達・構築のアジリティと柔軟性、先端技術の利用にある。あくまでDX達成の手段であり、コスト削減の手段ではない。
正しく使えばオンプレミスよりコストが下がることは多いが、単純にIaaSを利用するだけであれば、劇的に下がるわけではない。もちろん特定のピークがあるシステムや季節労働的なシステムは、それ以外の期間は縮退または停止できるのでクラウドにすると劇的に安くなるが、まれなケースだ。
オンプレからクラウドに移行すれば、データセンターの場所代、電気代、ハードの保守運用費用がなくなり、ハード起因での更改はなくなる。PaaSを使えばOSに起因する更改からも解放されることから、長い目で見るとコスト削減にはなる。
しかし、短期的なコスト効果を求めるとなかなか難しい。むしろクラウド移行コストや専用線の敷設コストにより、短期的なコストは上振れすることもある。長期的な視点がない場合、この結果を目にして「なんだよ、クラウドってダメじゃん」となってしまう。
クラウド活用の目的はDXであって、コスト削減ではない。目的がコスト削減の場合、クラウド活用は必ずしも適切な手段とは言えない。こういった会社は、経営計画にDXの達成と書いてある場合も多い。つまり、会社の方針が現場に浸透していない例といえる。
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