社内外に潜む“お邪魔虫”の正体 クラウド活用できない企業によくある4つの問題点(3/3 ページ)
クラウド活用が進まない企業は、どんな問題点を抱えているのか。“オンプレ思考”から脱却することの必要性を解説した前編に続き、後編では協力しているベンダーや社内の対立など、組織に起因するケースについて説明する。
派閥争いが招くトラブル クラウド vs. ○○の厄介さ
組織が抱えるそもそもの問題によりクラウド推進が進まないケースもある。よくあるのは、社内の対立や、部門別採算性が生み出す不幸に巻き込まれて一向に進まなくなるケースだ。
社内の対立で見られるのは派閥争いだ。既存のIT部門の不備(DX推進が遅いなど)を問題視して、CIOと違う派閥からDX推進部的を設立。それぞれが異なるメガクラウドを推奨(またはオンプレミス vs. クラウド)し、事業部門はカオスに巻き込まれる──という事例をたまに見かける。
争いの決着がつくか、何らかの妥協点がまとまるまで話が進むことはない。オンプレミスとクラウド、メガクラウド同士、SaaS:AとSaaS:Bというように対立構造になりやすいことが原因かもしれない。
部門別採算性の産み出す不幸により推進が進まないこともよくある。例えばIT部門がオンプレミスの仮想化基盤を大規模に構築していて、これを事業部門に切り売りしているとする。
この売価がクラウドより高く、そもそもの柔軟性やアジリティも不足している。一方でPaaSへのビジネスニーズがあり事業部門はクラウドを利用したいのだが、IT部門が断固拒否する──といったものだ。
他にもIT部門が推奨するクラウドだと、導入によってIT部門に収益が入る仕組みがある場合、推奨クラウド以外が認められず、事業部門が実施したいことが実現できないこともある。
どちらのケースも事業部門主導でDXを推進する仕組みが整えられれば突破できる。しかし、内向きの争いが激化する会社は本業のビジネスモデルが強く、部署を跨いで協力し、事業を推進する力がそこまで必要ではない。そのため、IT部門のテリトリーを事業部門が主導することはなかなか認められない。
対策としては、実現したいことを限定し、派閥争いを局地戦にすることが挙げられる。大規模なクラウド推進は難しくなるが、大きな争いを避けピンポイントで話を通すことで、なんとか取り組みを進めることはできる。
ここまで紹介したケースは、いずれも筆者がここ数年間で複数回遭遇したケースだ。クラウド活用が進まない理由としてよくあるケースといえるだろう。このように、クラウドの利用が進まない裏側には、ただ不安というだけでないさまざまな理由が存在する。もし社内でクラウド活用を進めたいにもかかわらず、何か障害があってうまくいかない場合、思考停止せずあらゆる可能性を考慮して手を打っていくべきだ。
著者紹介:伊藤利樹
NTTデータのエンジニア兼、コンサルタント兼、ビジネスディベロッパ―。セキュアにクラウドを利用するソリューション「A-gate®」を企画・開発し、世の中に展開している。また、クラウド利用体制の構築支援をライフワークのように実施。クラウドの基礎知識から利用時に決めるべきこと、作るべき体制、守るべきルールを伝え、世の中のクラウド利用を推進している。『DXを成功に導くクラウド活用推進ガイド CCoEベストプラクティス』の著者の一人である。
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