電気代高騰に揺れるデータセンタービジネス、事業者の対応は? “中の人”に聞く現状と対策(1/3 ページ)
電気代高騰のあおりを受けるデータセンタービジネス。事業者はどのように対応しているのか。実際にデータセンター事業を手掛けるNTTコムの“中の人”に詳細を聞く。
資源価格の上昇などに伴い、電力価格の高騰が続いている。家計だけでなく企業のビジネスにも影響が出始めており、新電力「Natureスマート電気」「あしたでんき」などは調達価格の高騰を理由にサービス終了に追い込まれている。
同じく電力価格高騰のあおりを受けているのが、運営に大量の電気が必要になるデータセンタービジネスだ。大量のサーバを保有・運用するデータセンターにとって、電力の価格は事業に大きく影響する。
実際にデータセンター事業を手掛けるNTTコミュニケーションズ(NTTコム)の松林修さん(プラットフォームサービス本部クラウド&ネットワークサービス部担当部長兼データセンタープロダクトオーナー)も「燃料費・電気代の高騰に大きな影響を受けている」と話す。
一方、データセンター事業者はただ手をこまねいているわけない。省エネ施策などを通し、電気代の高騰に対策しているという。本記事では同社の取り組みを例に、データセンタービジネスが置かれている状況や、省電力化の現状を探る。
しわ寄せは「非ハイパースケーラー」に データセンター事業のいま
NTTコムは、関東に11拠点以上、関西に7拠点以上のデータセンターを保有。国内では、冷却設備が整ったデータセンターのスペースを、発熱しやすいサーバの置き場所として他社に貸し出すサービスなどを提供している。昨今は大手クラウドベンダーなどのいわゆる“ハイパースケーラー”による大規模な利用も増えているという。
松林さんによれば、同社の事業は電力価格の中でも「燃料調整費」の高騰に影響を受けているという。燃料調整費は、原油や液化天然ガスといった化石燃料の価格変動を、迅速に電気料金に反映させる仕組みだ。燃料価格の変動に応じて、毎月の電気料金を調整することで、電気事業者の経営を安定させている。
「現状は燃料調整費が非常に高くなっている」と松林さん。「仮に1kWhの料金が100円だとしたら、これまでは燃料調整費がマイナス2.9円くらい。しかしここ半年でプラス4円くらいまで上がっている。24時間365日動くデータセンターでは、これがかなりの金額になる」(松林さん)という。
NTTコムの場合、燃料調整費値上げの影響は、主にハイパースケーラー以外の事業者との取引に出ているという。
同社は基本的に、ハイパースケーラー向けには、電力価格をデータセンターの利用料金に含める形でサービスを提供している。つまり、価格が上がった分はハイパースケーラー側が負担する契約になっているわけだ。
松林さんによれば、NTTコムだけでなく、他のデータセンター事業者も同様の契約形態を採用している場合が多いという。そのため電力価格が高騰する状況下では、ハイパースケーラーはデータセンターを切り替えてもコストを下げにくく、解約・移行などにもつながっていないとしている。
一方、ハイパースケーラーを除く、中〜小規模にデータセンターを活用する事業者は話が別だ。こういった事業者に対してはラック(サーバを収納する棚)単位でスペースを貸し出しており、電気代は料金に含めていないという。つまり電気代の高騰は、データセンター事業者の収益減少に直結する。
「例えば燃料調整費などで電気代が3割上がると、利益が吹っ飛んでしまうような状況。多くのデータセンター事業者が同じ悩みを抱えていると思う」(松林さん)
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