基地局からの電波でAirTagなどに給電 ソフトバンクが実験に成功、世界初
携帯基地局のリソースを活用して、IoTデバイスなどに無線給電(WPT)を行うシステムの開発と実験に、ソフトバンクらが成功した。AirTagやTileなどのトラッキングデバイスや、センサーなどのIoTデバイスに屋外で給電する用途を想定している。
携帯基地局のリソースを活用して、IoTデバイスなどに無線給電(WPT)を行うシステムの開発と実験に、ソフトバンクらが成功した。「AirTag」や「Tile」などのトラッキングデバイスや、センサーなどのIoTデバイスに屋外で給電する用途を想定している。ソフトバンク、京都大学、金沢工業大学が10月7日、共同研究の成果として発表した。
実験では、5Gで使われるミリ波の設備を使い、同一周波数内に通信とWPT機能を乗せた。通信用のベースバンド装置、アンテナなどをそのまま利用しており、現状のミリ波通信の装置でWPTが行えるのが特徴。通信とWPTの分離には、時分割多重のほか、アンテナの出力方向を動的に変えるビームフォーミング技術も使い、動的に比率を調整できる。
「特に都心部では、夜間になると基地局の利用率が下がる。使われていない時間に、WPT機能で街中に配置されているセンサーを駆動させられる」(ソフトバンク)
これまで屋内向けのWPT機器の開発は各社が進めてきたが、無線LANなどに使われるISMバンドを主に利用するため電波干渉が課題となっていた。ソフトバンクの取り組みでは、通信用に割り当てられたミリ波を利用するため干渉を調整する必要がない。
次世代通信規格となるBeyond 5Gおよび6Gの拡張機能としての実用化を目指す。時期は2030年を想定し、国際標準規格化もにらみ3GPPやITU-Rへの働きかけも検討する。
現時点の給電能力は10mW以下で、IoTデバイスをターゲットとしており、30年時点ではスマートフォンのようなデバイスへの給電は難しい。またミリ波帯は伝搬損失が大きいため基地局は最大でも数百m程度のスモールセルとなるが、その中でも給電可能距離としては10m程度を想定している。
給電能力を上げる効率化アップの方法として、アンテナの大開口化と受電ICの性能強化がある。アンテナ大開口化に伴う課題の解決法として、192素子のフェイズドアレイアンテナから送電し、金沢工業大学が開発した電磁波を電流に変換する「GaAsレクテナIC」で受電する実験も行い、京都大学が提唱するフォーカスビームの有効性も確認した。
また現時点では人体への影響はほぼないが、人体検出機能を盛り込むことで、もう少し高いエネルギーを給電できる可能性もあるとした。
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