インボイス公表サイトの「本名バレ」対策は不十分? 国税庁の言い分は……
「本名バレ」リスクを指摘され、国税庁がインボイス事業者のリストから氏名などを削除したが、「削除された項目は簡単に復元でき、対策が不十分だ」との指摘が出ている。
消費税のインボイス(適格請求書)発行事業者を公表するWebサイトで、「ペンネームを使っているクリエイターの本名や住所がバレるリスクがある」などとの指摘があり、国税庁が事業者リストから氏名などを削除して再公表した件について、「削除された項目は簡単に復元でき、対策が不十分だ」との指摘が出ている。
問題が指摘されているのは、国税庁が運営するインボイス事業者公表サイトだ。
インボイス登録番号を入力すると、事業者の氏名(必須)や所在地・屋号(それぞれ公表を希望した場合)などを表示する他、登録した全事業主一覧「全件データファイル」をCSVなどでダウンロードする機能がある。
この全件ファイルに当初、事業主の氏名や屋号、所在地などが含まれており、「インボイスに登録したクリエイターなどの本名入りのリストが取得できてしまうのでは」などと批判を浴びた。
国税庁はその後、ファイルから氏名や所在地など個人につながる情報を削除したが、「削除された項目を復元するExcel関数が簡単に作れてしまう」とTwitterユーザーの「こばさん」(@wakwak_koba)が実践して見せ、国税庁の対策は不十分だと指摘している。
国税庁の言い分は
この指摘に対して国税庁の担当者は、「全件データそのものには、事業者の氏名や所在地などの情報は含まれていない」と改めて説明。「全件データとその他のデータをひも付けると簡単に復元できるのでは」と指摘すると「規約に則って使ってほしい」と述べるにとどめた。
そもそも、インボイス事業者の氏名をネットで公表することは、消費税法で義務づけられているという(屋号・所在地は公表を希望した人のみ)。
さらに、同法は税務署長に対して、「インボイス事業者の登録簿を、インターネットを利用して、利用者が容易に検索することができるように体系的に構成された情報」で提供することを求めており、公表サイトはその目的に沿って作られたものだという。同サイトでは、登録番号から氏名などを引けるWeb APIも提供されている。
ちなみに「こばさん」は、APIも使わず、簡単なExcel関数だけで、氏名などを含めたリストを復元できたという。
Excel関数がある程度分かる人なら簡単にデータを復元できるとなると、国税庁の「全件データから氏名などを削除した」ことは表面的な対策に過ぎず、クリエイターなどの個人情報を守る対策として十分だとは言えないだろう。
「個人情報リスト」公表を定めた法律への違和感
インボイス登録事業者は既に何十万という単位になっており、消費税法は、その個人名を政府が堂々とWeb公開すると定めている。インボイス公表サイトには、ペンネームなどを使っている事業主の氏名という個人情報を守る視点も欠けている。
本名で仕事をしている事業主には違和感がないかもしれない。自営業者と取引する企業にとっては、取引先がインボイス事業者か確認する手段として必要であり、多数の取引先をかかえている場合は全件データリストも利便性が高いだろう。
だが、「インボイス事業者になるとWebに必ず名前が載る」という法律そのものが、匿名で活動している事業主にインボイス登録をためらわせる要因にもなり、ひいては、制度のそのものを揺るがすことにもつながるのではないだろうか。
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