管理部門のデータ活用で営業部門も幸せに 西濃運輸の“現場主導”なBI導入が成功したワケ(1/2 ページ)
データを活用した営業活動の強化を現場主導で進める西濃運輸のロジスティクス部。実はデータ活用のプロジェクトを立ち上げたのは営業部門ではなく、管理部門だったという。管理部門の取り組みがなぜ営業の強化につながったのか。プロジェクトの全容をキーパーソンに聞く。
赤いカンガルーのロゴが入ったトラックが印象的な西濃運輸。同社は新たな成長の柱と位置付けるロジスティクス事業で、データとデジタル技術を活用した営業活動の強化に乗り出している。特徴的なのは、プロジェクトがもともと、営業活動の効率化を目的としていなかった点だ。
「営業のプレゼン資料作成にかける工数は大幅に削減されている。クライアントとBI(ビジネスインテリジェンス)のダッシュボードを見ながら一緒に考えることも可能になり、クライアント自身も気づいていなかった課題の可視化にもつながっている」──取り組みの効果について、貫名忠好さん(ロジスティクス部部長補佐)はこう話す。
ロジスティクス事業のプロジェクトは当初、部内の管理部門が中心になって始まったものだった。しかし取り組みの過程で、部内の営業部門を巻き込んだものに変化。結果、管理部・営業の双方がメリットを享受できるようになったという。
現場起点のアイデアをスピーディーにシステムに落とし込みつつ、継続的な改善も進められているという西濃運輸。同社が進めたプロジェクトの全容を貫名さんと田中航大さん(ロジスティクス部ロジスティクス課)に聞いた。
「輸送のセイノー」から「ロジのセイノーへ」 西濃運輸の現状
社名もあって、西濃運輸は輸送事業の会社だというイメージを持つ人は多いかもしれない。しかし近年、同社は「輸送のセイノーからロジのセイノーへ」という方針を掲げ、輸送事業のアセットを生かしたロジスティクス事業に注力している。
同社のロジスティクス事業とは、モノを運ぶだけでなく、倉庫機能を含めて顧客の物流を総合的に支援するビジネスだ。西濃運輸単独でトラックターミナルを全国に150カ所ほど配置しており、その2階を倉庫にして、流通加工や在庫管理を含む倉庫業務と輸配送業務を合わせて提供できるように整備しているという。
ロジスティクス部部長補佐の貫名忠好さんは「こうした総合的な物流ソリューションを自社のアセットを活用して提供できるのが西濃の強み。クライアントごとの要望に柔軟に対応できる」と自信を見せる。
全国に拠点を持ち、複数の荷主の貨物を混載して小口配送にも対応してきた同社の顧客層は中小企業が中心。倉庫を自前で持つことが現実的ではない顧客も多いことから、ロジスティクス事業の需要は伸びているという。
予実管理にRPA活用 効率化を実現も課題が
ロジスティクス事業を担うロジスティクス部は大きく営業部門と管理部門に分かれている。貫名さんが担当する管理部門は、全国の拠点の収支などを集計して予実管理をするのがメインの業務の一つだが、当初はこの業務負荷が大きな課題となっていた。
「各拠点の売上、費用の支払いなどを別々のシステムで管理しており、必要なデータを一度に取り出せない問題があった。項目別に毎月Excelデータを抽出し、それを手作業で集約して一つの分析表を作っていて、この作業がかなり大変だった」(貫名さん)
いわば定型業務に膨大な手作業が発生していたわけだが、2017年にRPAを導入し、Excelの集約作業の効率化を図った。しかしここで、新たな課題が顕在化した。
管理部門には、単純に数字を集約するだけでなく、拠点運営の最適化や営業力の向上に役立てるために、実績データを分析する役割も求められている。分析表をチェックして問題がある数字、もしくは不自然な数字を見つけたら、原因の特定と改善策の検討のために前年同月や過去数カ月分のデータを参照するという作業が頻繁に発生するという。
「数字に問題があった場合に、費用を使い過ぎたからなのか、売り上げに問題があったのか、仮に売り上げが悪かったのなら具体的にどんな顧客、どんな事業の売り上げが悪かったのかなど、細かく分析して改善点を特定するにはかなりの数のデータを参照しなければならない。RPAでExcelデータを集約する作業を効率化しても、集約前のデータや過去のデータにさかのぼって分析する際の業務負荷軽減にはつながらないので、より根本的な対策が必要だと感じるようになった」(貫名さん)
そこで、ロジスティクス部はデータ活用・分析にクラウドを活用する方針を取った。きっかけは競合他社が導入事例セッションに登壇していたセミナーで、クラウドBIツールの「Domo」に出会ったことだ。
「データソースとなる複数のシステムとDomoを接続してデータをプールするイメージで、使いたいデータをいつでも取り出せ、自分たちが求める形で表現できる点がまさに自社の課題感にフィットしていて、使うイメージがすぐに固まった」と貫名さん。まずはDomoの利用を前提に、課題の解決を試みることにした。
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