管理部門のデータ活用で営業部門も幸せに 西濃運輸の“現場主導”なBI導入が成功したワケ(2/2 ページ)
データを活用した営業活動の強化を現場主導で進める西濃運輸のロジスティクス部。実はデータ活用のプロジェクトを立ち上げたのは営業部門ではなく、管理部門だったという。管理部門の取り組みがなぜ営業の強化につながったのか。プロジェクトの全容をキーパーソンに聞く。
「営業への貢献」が社内コンセンサスのカギに
ただ、実際の取り組みを始めるに至っては課題もあった。西濃運輸社内でもクラウドサービスを広く活用する機運は高まっていたものの、全社規模の導入となればハードルは高くなる。そこで貫名さんは、まずロジスティクス部の中だけでスモールスタートするという方針で情報システム部門や経営層の理解を得た。
Domoを提供するドーモの支援の下、導入はロジスティクス部が主導。PoC(概念実証)で具体的なアウトプットの形を示せたこともあり、Domoの正式採用にもこぎつけられたという。
社内でのコンセンサス形成でもう一つポイントになったのは、Domoの導入が営業活動の強化につながるビジョンを示せたことだ。貫名さんは「管理部門の業務が効率化されるというだけではなかなか決裁者に納得してもらえなかった。Domoによるデータ分析を営業支援に役立てることでもっと稼げるようになるという説明が必要だった」と話す。
実際、Domoの導入は営業活動にもメリットがあった。Domoを活用することで、集約したデータから担当顧客に関する必要なデータを自分で選択して分析・活用し、営業提案や関係づくりに役立てられているという。当初の予定通り、管理部門へのメリットもある。Domoを予実管理と実績データの分析に活用することで、数日かかっていた業務が数時間で処理できるようになったという。
「クライアントのどういう商品が、いつ、どこに出荷されたかなどの実績データを集約して分析できるようになった。例えば現在は名古屋に物流センターを置いているが、実はもっと東京に近いほうが効率的な物流の仕組みになるかもしれない、といったことが見えてくる。クライアントからロジスティクスをどう最適化するかという相談を受けた場合、従来は検討に2週間くらいの時間が必要だったが、いつでも必要なデータを見たい形に加工できるようになった」(貫名さん)
営業部門と顧客の信頼関係は従来以上に高まった手応えもあるという。管理部門も予実管理と分析業務の効率化で創出した時間を営業支援業務に充てている。営業部門の要望なども聞きながら、ダッシュボードのカスタマイズやレポーティングの支援なども担い、データドリブンな営業に一役買っているという。
グループ統合後はデータ一元化へ
管理部門と営業部門が一体となって事業の成長に取り組む環境ができつつある西濃運輸。Domoの運用をロジスティクス部内で完結できたことが大きなポイントだったといえそうだ。「こんなデータをこんな視点で分析したい」というアイデアを、社内で手早く形にできるスピード感と手軽さは、収益向上への取り組みを業務負荷やコストを抑えつつ進めることにもつながる。
Domo導入後に気付いた思わぬメリットもあったという。ドーモのサポート品質が想像より良かったことだ。「チャットベースだがレスポンスが速いので、つまずくことがあっても解決策がすぐに見つかる。新たなデータ活用のアイデアが生まれることもある」(田中さん)
クラウドサービスならではの継続的な機能向上にも魅力を感じているという。田中さんは「データを管理する側に必要な機能だけでなく、ダッシュボードで使えるビジュアル的な機能などもどんどん追加されていて、営業の提案資料の見せ方もさらにアップデートできる」と意気込む。
来春には濃飛西濃運輸、東海西濃運輸、関東西濃運輸というグループ会社3社との統合を控える西濃運輸。現在、ロジスティクス部がDomoで活用しているのは西濃運輸のデータのみだが、統合後は全社のデータを過去分も含めて一元的に扱うことができる仕組みを稼働させる計画だ。そのための準備も急ピッチで進めているという。
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