“出資したい側”が情報掲載してスタートアップとマッチング M&Aクラウドが資金調達プラットフォームを始めるワケ(2/2 ページ)
スタートアップに出資したい大手IT企業などが情報を掲載し、それらを見てスタートアップが出資を依頼する仕組みの「資金調達Cloud」スタート。
“買収したい”側が情報を掲載する「M&Aクラウド」
こうした構造になったのは、もともとM&Aをマッチングする同社のサービス「M&Aクラウド」から独立する形で始まったため。M&Aクラウドは企業を買収したい大手IT企業が「こんな企業を探しています」という形で情報を掲載。自社を売却してもいいと考える企業が、それに応募する形だ。
2018年のサービス開始から4年で、買い手として登録した企業数は約1600社。日本のIT上場企業の約3割が利用するサービスに成長した。
サービスを提供する中で増えてきたニーズが、完全買収ではなく出資だった。VCからの出資が厳しくなる中で、売却ではなく資金調達を希望してM&Aクラウドに登録する企業が急増。特に、会社設立前後であるシードステージからの出資希望が増加した。
これは市況だけでなく、起業領域の変化も関係している。ITやWebの世界で完結できた以前の起業とは違い、昨今はリアルビジネスのDX化など既存事業との結びつきの強い起業が増えた。「プロダクト作りのタイミングから事業会社を活用しないと立ち上がらない。そういう業態が増えてきている」と及川氏は言う。
そのため、製品やサービスが市場に投入された「プロダクトマーケットフィット」が済み、組織もできあがったタイミングである、シリーズBラウンドあたりの出資ニーズが大きいという。出資の規模感としては3〜5%程度、持分法未満での投資が多い。事業提携を行いシナジーを出せる前提での出資となるため、VCなどからの純粋投資に比べ「バリュエーション(企業価値評価額)1.5倍くらいが肌感覚」(及川氏)だという。
M&Aクラウド内で提供してきた資金調達サービスの段階で、2021年には15件の資金調達をアレンジした。資金調達Cloudとして本格稼働したあとは、3年後100件を目指す。
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