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アリババ「独身の日セール」、初の「GMV非公表」の理由 〜海外メディアは「数字ないと報道できない」と困惑:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(3/5 ページ)
中国の消費の勢いを体現してきたアリババグループのECセール「独身の日(別名ダブルイレブン)」が、開始以来初めてGMVの非公表を決め、波紋を広げている。なぜGMVが非公表となったのか。アリババにターニングポイントが訪れたのは20年だ。
日本はそうではない。独身の日のニュースの扱いは、1年に1度の「季節の風物詩」だ。セール最終日の11月11日か翌12日に「開始◯時間で前年1日分の流通額を超えた」「今年のGMVは過去最高を更新」「今年のトレンド」が集中的に報じられ、セールが終わると忘れら去られる。線ではなく「点」の報道が毎年繰り返されてきた。
数兆円規模の注文と物流需要が短期間に発生する独身の日は、小売業界のイノベーション史そのものである。アリババやライバル会社のJD.com(京東集団)は、大量の注文をさばくために人工知能(AI)やビッグデータに投資し、無人配送車を街中に投入し、越境EC事業者向けに翻訳機能を持つライブ配信を開発してきた。
ただ今の日本の報じ方では、そういった「流れ」「イノベーション」は取材する側の頭にも残っていない。
かくして筆者も11月11日が近づくと、複数のテレビ局から「今年の売り上げはどうなりそうですか?」「今年のトレンドは?」「半導体不足は影響していますか?」「ウクライナ問題の影響は……」と質問を受け、最近では中国の消費どころか「中国を取り巻く問題の答えを探す」セールになっているのだなあと感じることが増えていた。
日本メディアにとって独身の日セールは、Amazonのサイバーマンデーや楽天のスーパーセールとは全く別の位置付けになっているのだ。
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