なぜ大企業はWeb3に取り組むべきなのか? MUFG、ソニー、伊藤穰一が語った理由(2/3 ページ)
「なぜ大企業がWeb3?」と訝(いぶか)しむ声も多い。Web3の最も普及した利用例である仮想通貨をみれば、世界的に活躍しているのは専業のスタートアップであり、決して伝統的な大企業ではないからだ。
「Web3で何が起きているのかというと、イーサリアムなどプロトコルを運営しているレイヤーにお金が流れ、現在のビッグテックが位置するアプリケーションレイヤーの利権が減って、コンテンツレイヤーとプロトコルが近づく」と伊藤氏。
アプリケーションレイヤーの王者であるFacebook、Apple、Googleは、そこで30%といった高額の手数料を取っているが、Web3の世界ではその利幅が薄くなる。例えば、NFTのマーケットプレイスで有名なOpenSeaの手数料は2.5%でしかない。
「日本ではさまざまな規制でプロトコルは作れない。でもコンテンツレイヤーを発展させて、日本が弱かったアプリケーションレイヤーを、上と下から挟み込める」(伊藤氏)
そもそもWeb3はアンチGAFAの文脈で語られる。日本企業は、ものづくりの時代には世界一のブランドを築き上げたが、Web2の時代には完全に米国と中国の後塵を拝した。コンテンツが再度優位に立つWeb3のブームは、日本が巻き返すチャンスだという発想だ。
ここには、大量のコンテンツIPホルダーであるソニーも注目する。ソニーグループの事業開発プラットフォーム担当 ソニーイノベーションファンドの御供俊元執行役専務は、米国、特にハリウッドが作ったコンテンツの定義から脱却するチャンスだともみる。
「アフリカにインフルエンサー開拓に行って話を聞くと、プラットフォームはYouTubeかFacebookでなければダメだといわれる。こういうタレントと仕事ができるようになることはソニーにとって重要で、だから(アプリケーションレイヤーが相対的に弱くなる)Web3は大事だ」(御供氏)
自ら金融をWeb3で置き換える
狭義のブロックチェーン技術活用という意味では、三菱UFJ信託銀行は、すでに地に足を付けた取り組みを行っている。デジタル企画部デジタルアセット事業室の齊藤達哉プロダクトマネージャーは、ブロックチェーンを使ったセキュリティトークンプラットフォーム「progmat」の顔だ。
「Web3に取り組むと、なぜブロックチェーンなの? と絶対にいわれるだろう。私なりの理解は、ブロックチェーンは金融と親和性が高いということだ」(齊藤氏)
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