中国VRの「PICO4」、「Meta Quest」に追いつくための2つの条件:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(3/5 ページ)
中国・バイトダンス傘下の「Pico Technology」が9月下旬、VRヘッドセット「PICO 4」を発表した。VR市場は急成長しているが、ヘッドセットはMetaの「Meta Quest」シリーズがライバル不在の強さを見せる。PICO 4は市場の勢力図を変えることができるのだろうか。
バイトダンスとテンセントが争奪戦
欧米のIT業界がVRに目を付けたのは2010年代前半だ。Metaが2014年にOculusを買収したように、中国のメガIT企業もVRを有望分野と見なしていたが、中国には当時、M&Aの対象になるような有望企業が存在しなかった。
VRハードウェアとコンテンツプラットフォームを手掛けるPicoが設立されたのは15年。創業者の周宏偉氏は、米Appleにワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」を製造する音響デバイスメーカー「Goertek」の幹部を務めた人物で、PicoはGoertekのバックアップも受けつつ、VR業界が盛り上がりに欠ける中で生き残ってきた。
21年夏、Picoはショート動画「TikTok」を運営するバイトダンスに買収された。動画コンテンツとシナジーが期待できるVRと拡張現実(AR)に積極的に投資していた同社は、世界最大のゲーム会社であるテンセント(騰訊)と競り合ってPicoを約50億元(約1000億円)で取得したと報じられている。
買収後3カ月でPicoのチームは200人から1000人に増員された。グローバルでMetaと戦えるデバイスを開発するため、幹部をはじめ多くのエンジニアがバイトダンスからPicoに異動した。米TikTokの従業員の一部もPicoに合流したほか、シアトルではVRデバイスの開発者やVRゲームの責任者の人材を募った。
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