改ざんされても撮影者が分かる“追跡”機能をカメラに ニコンが「Z 9」ベースのテスト機を作った理由(2/2 ページ)
改ざんや著作権侵害など、デジタルコンテンツでは避けて通れない課題を解決しようとする取り組みが、米Adobeを中心に複数社が加盟するCAIだ。このコンテンツ来歴記録機能をカメラに搭載しようと動いたのがニコンだ。
まだまだ改善点は多い
ただし、改善余地もまだまだ多い。まず、メタデータを付与するためのハッシュ値の演算でCPUパワーを使う。Z 9がテスト機に選ばれたのも、ニコンのカメラの中でもっともCPUの性能が高かったためだ。現時点で製品化の予定はないというが、コンテンツクレデンシャル機能を実装する場合は専用のコプロセッサを搭載するなどして、処理速度の高速化と消費電力の削減を両立する方法もあるという。
メタデータは、作品を制作したPhotoshopなどのソフトやCAIのクラウドを経由してCAI側にバックアップされるため、メタデータが剥がされていても重度の加工が施されていない限り、復元することができる。ただし、カメラで撮影した場合、写真データをCAIにアップロード(あるいはPhotoshopなどで編集)するまでバックアップは作成されないため、悪意のある第三者がバックアップ前にメタデータを何らかの方法で除去すると復元できなくなる。
カメラに生体認証の機能があるわけではないので、撮影している本人が登録者かどうかを証明する手段も現時点ではない。デバイスとユーザーを紐付けることは、カメラ単体だけでなく証明書/ネットワークなどを含めて、強化する方針という。
コンテンツクレデンシャル自体も仕組み上、来歴記録に対応していない編集ソフトで加工した場合、それ以降の来歴は記録されなくなる(それ以前の来歴は残る)。悪意を持った第三者が加工した場合の追跡には限界があり、対応ソフトも少ない現状だと、当面はコンテンツを扱うメディア・企業が「来歴がしっかりしているデータのみを利用する」といったポリシーでクリーンなデータを利用したい場合に有用な技術といえる。
先述の通り、ニコンは現時点で来歴記録機能を同社製カメラに実装することを決定していない。当面は、Z 9ベースのテスト機で改善点などを洗い出していくとともに、プロ向け製品への搭載の可能性を探っていくことになりそうだ。
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