「インボイス賛成」と話すTOKIUM社長と考える、免税事業者はどうするべきか(2/3 ページ)
インボイス制度が誰のためかといえば話は簡単で、この制度で2480億円の税収増が見込まれている。要するに増税の一つというわけだ。では免税事業者はどう考えて対応していけばいいのだろうか。
インボイス制度で課税事業者化を強いると下請法違反に?
そもそもフリーランス保護新法の議論も進む中、ともすれば「課税事業者となってインボイス制度の適格事業者とならない人には発注を控えるように」と言い出す会社だって現れかねない。
公正取引委員会は、インボイス制度を理由に取引先に課税事業者になることを強いることについて注意喚起している。フリーランスの方々は、毎年公正取引委員会から「下請けイジメをされていませんか?」という手紙をもらっていると思う。これに返答すると、ちゃんと企業に査察が入るので、けっこう効果は大きいと思っていいだろう。
仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことそれ自体が、直ちに問題となるものではありませんが、見直しに当たっては、「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意が必要です。
課税事業者になるよう要請することにとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあります。
さて課税売上高1000万円以下というのは、ほとんどが零細事業者だ。その人たちへの影響をどう考えるのか。
「益税がなくなることで立ち行かなくなる人が大量発生するようなら経済的なケアをしたほうがいいと思う。ただし、当社(TOKIUM)のお客さまでもある、芸能、テレビ、建設は個人事業主あっての産業。いかにして彼らに仕事を続けてもらうかを考えている事業者が多い」(黒崎氏)
なるほど、Webメディアのような事業もそうだが、発注先は下請けなどではなく、仕事をお願いする“先生”である。そういう意味では、実力のあるフリーランスにとってはインボイス制度はそんなに気にするものでもない。でも、若手などにとっては厳しいことになるだろう。
でも黒崎氏は、実際の企業はちゃんとフリーランスのことを考えていると言う。
「発注先対受注先というような二項対立にはなっていない。フリーランスを切って消費税分を確保したいというところは多くなく、トラブルになるようならフリーランスと事業を継続したいと考える事業者がほとんどだ」
確かに免税事業者と取引すると消費税控除ができなくなるとはいえ、そこには経過措置がある。当初3年は免税事業者からの仕入れも80%を控除できるわけで、つまり支払わなければいけない消費税は10%の20%で2%でしかない。発注先とトラブルになったり交渉に時間を費やすコストを考えると、このくらいは許容範囲だと考える事業者も多そうだ。
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