インボイスで漫画家の2割が廃業も? 危機感抱くエンタメ業界 声優・アニメ・演劇団体と共同記者会見(1/5 ページ)
インボイス制度が始まると、エンタメ業界のフリーランスのうち2割が廃業するかもしれない――11月14日、インボイス制度反対を訴える記者会見を、声優・漫画・アニメ・演劇業界が連携して実施した。
インボイス制度が始まると、エンタメ業界のフリーランスのうち2割が廃業するかもしれない――11月16日、インボイス制度反対を訴える記者会見を、声優・漫画・アニメ・演劇業界が連携して実施した。
記者会見の様子(左から、「インボイス制度を考える演劇人の会」の廣瀬綾さん、丸尾聡さん、「アニメ業界の未来を考える会」の植田益朗さん、TRIGGERの大塚雅彦代表、「VOICTION」共同代表の岡本麻弥さん、「インボイス制度について考えるフリー編集(者)と漫画家の会」の由高れおんさん)
インボイスは、年収1000万円以下の個人事業主とその発注者に、新たな税負担や事務負担を求める制度だ。さまざまな業界のフリーランスと、彼らに発注している企業が影響を受ける。
会見に参加したのは、「インボイス制度について考えるフリー編集(者)と漫画家の会」代表で、漫画家の由高れおんさん、アニメプロデューサーで、「アニメ業界の未来を考える会」の植田益朗さん(スカイフォール代表)、「インボイス制度を考える演劇人の会」の丸尾聡さん、声優の有志でつくるインボイスに反対する団体「VOICTION」共同代表の岡本麻弥さんなど。
各団体が業界内で個別にアンケートを行ったところ、「インボイスが導入されれば、廃業する可能性がある」と答えた人が、どの業界でも2〜3割いることが判明。収入が低い若い人ほど廃業のリスクがあり、業界のすそ野を狭め、日本の文化を衰退させる可能性があると、危機感をあらわにする。
「アニメやゲーム漫画などを“クールジャパン”ともてはやすのに、そういった職のクリエイターを困窮させる政府の指針に納得いかない」。漫画家の由高さんは言う。
零細事業者を直撃するインボイス
インボイス制度は、消費税計算の新しい仕組みだ。政府は「正確な消費税額の把握」を目的に掲げている。
制度がスタートする2023年10月以降は、発注者・受注者に、消費税率などを明記した「インボイス」(適格請求書)と呼ばれる請求書の発行・保存が義務付けられる。インボイスは、事前に登録した適格請求書発行事業者(インボイス事業者)しか作成できない。
最も影響が危惧されているのは、これまで消費税の納税が免除されていた、年収1000万円以下のフリーランス(免税事業者)だ。
23年10月以降、フリーランスに仕事を発注する企業などは、免税事業者に支払った消費税分を控除できなくなる。このため、免税事業者との取引を控える動きが出るだろうと予想されている。つまり、年間の売上規模が数百万円程度の零細フリーランスも、免税事業者のままでは仕事がなくなる恐れがある。
仕事を得るために、免税事業者が課税事業者(インボイス登録事業者)になると、消費税分(最大で売り上げの10%)の税負担が新たに発生する。課税事業者になった場合、請求書の保管や税額の計算などの事務負担も増える。また、発注する企業側にも新たな事務負担が発生することになる。
さらに、インボイス登録事業者は、国税庁の「インボイス事業者公表サイト」で氏名などが公表される。ある程度の個人情報保護対策はなされているものの(関連記事)、ペンネームなど実名以外で仕事をしているクリエイターには、“本名バレ”のリスクを感じている人も多い。
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