インボイスで漫画家の2割が廃業も? 危機感抱くエンタメ業界 声優・アニメ・演劇団体と共同記者会見(3/5 ページ)
インボイス制度が始まると、エンタメ業界のフリーランスのうち2割が廃業するかもしれない――11月14日、インボイス制度反対を訴える記者会見を、声優・漫画・アニメ・演劇業界が連携して実施した。
アニメ業界も25%が「廃業する可能性がある」
「国はアニメ業界を潰そうとしているのではないかと思うぐらい、憤慨している。まさに弱い者いじめだ」――アニメプロデューサーの植田益朗さんはこう話す。
アニメ業界で働くフリーランスを対象に10月に行ったアンケートによると、年収300万円未満の人が半数に上った。インボイス導入で、25.0%が「廃業する可能性がある」「廃業することを決めている」と回答。32.2%が「仕事が減ると思う」と答えた。
「アニメ業界は“ブラック産業”と呼ばれることもある。そういった部分もゼロではない」と認めつつ、「業界全体で、労働環境の改善、アニメーターの社員化などを進めている」と訴える。ただ、全員が社員になるわけではなく、フリーランスの活躍は欠かせない。
アンケート回答者の年収を年代別で見ると、20代の8割が年収300万円未満と、若手ほど低収入なことも判明。インボイス制度により、業界を支えるフリー、特に、収入の低い若手が廃業せざるを得なくなる可能性があると、危機感を強める。
アニメ制作会社など企業も、インボイスにより経理関係の事務作業が増え、課税と免税のクリエイター間で仕事の振り分けが必要になるなど、影響が大きい。
「プロメア」「キルラキル」などの人気作で知られるアニメ制作会社・TRIGGERの大塚雅彦代表は、インボイス問題について「フリーランスの問題ととらえられていることが多いが、免税事業者への仕入れ控除ができなくなるなど、事業者にも問題が出る。『一部の人の問題』だと思われているが、社会全体に関わる問題だと知ってほしい」と述べる。
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