アニメ業界で働くフリーの半数が年収300万円未満 インボイスで4人に1人が「廃業の危機」
「アニメ業界で働くフリーランスの半数が年収300万円未満」「インボイス制度が導入された場合、廃業する可能性がある人は4人に1人」――こんな調査結果が発表された。
「アニメ業界で働くフリーランスの半数が年収300万円未満、インボイス制度が導入された場合、廃業する可能性がある人は4人に1人」―――こんな調査結果を、コンテンツ業界向け就職支援事業を手掛けるワクワークが10月20日に発表した。
インボイス制度が導入されると、収入の低い個人事業主の税負担と事務作業が増えるため、「働き盛りのクリエイターにとって、アニメ業界での活躍を諦めさせる一因となる恐れが強い」と同社は懸念している。
調査はSNSで告知してWebアンケートで実施。アニメ業界でフリーランス(個人事業主・小規模事業者等)として働く1132人から回答を得て集計した。
回答者の年収は、100万円未満が15.4%、100〜200万円未満が15.0%、200〜300万円未満が21.0%。約半数が300万円を割っており、「かねて課題とされるアニメーターの低賃金問題の実情もうかがえる結果」(同社)となった。年代別で見ると、20代の8割が年収300万円未満だった。
「インボイス制度が導入された場合、アニメ業界におけるあなたの仕事は増減すると思いますか?」との質問には、25.0%が「廃業する可能性がある」「廃業することを決めている」と回答。32.2%が「仕事が減ると思う」と答えた。
「廃業する可能性がある」「廃業することを決めている」と答えた人を年代別に見ると、20代が40.6%、30代が36.7%と若手が多く、年収別内訳では「300万円未満」が71.7%に上った。「インボイス制度の導入が、若手・働き盛りのクリエイターたちにとってアニメ業界での活躍を諦めさせる一因となる恐れが強い」と同社は懸念する。
また「アニメ業界の仕事の取引先から、インボイス制度に関する要請はありましたか?」の設問(複数回答)には、89.5%が「まだ何もない」と答えた一方、取引先から要請を受け、「インボイス発行事業者にならない場合は値引きすると言われた」「インボイス発行事業者にならない場合は取引を停止すると言われた」人も3.1%いた。
インボイス制度への賛否を尋ねたところ、全体の85.8%が「将来的にも導入するべきではない」と回答。その理由は「インボイス制度の納税・事務負担は、アニメ業界全体に影響を及ぼすから」「若手ほど影響が大きく新規参入の弊害にもなり、アニメ文化が衰退する可能性があるため」などが上位に挙がった。
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