インボイス問題、声優が語る“陳情”のリアル 「超塩対応」の議員と涙のバトルも(1/5 ページ)
「陳情をしっかり聞いて下さる議員さんも多いのですが、“超塩対応”の議員さんもいて……。そういう方が、インボイス制度を左右するキーマンなんです」。インボイスに反対する声優団体・VOICTIONの涙のバトル。
スタジオで声を録った後、永田町の議員会館で議員と会って陳情し、スタジオに戻って次の仕事に入る――ある声優の日常だ。
インボイスに反対する声優団体・VOICTION(ボイクション)の参加者たちは、こんな日々を送っている。
「陳情をしっかり聞いて下さる議員さんも多いのですが、“超塩対応”の議員さんもいて……。そういう方が、インボイス制度を左右するキーマンなんです」。VOICTIONに参加する、声優の福宮あやのさんはこう話す。
VOICTIONは、他団体と協力しながら9月に陳情を始め、12月半ばまでに、国会議員約41人、地方議会議員7人と会談してきた。冷たくあしらわれても、話を聞いてもらえなくても、当たって砕けながら進んできた。
仕事は減るかもしれないが……覚悟のインボイス反対 文化の衰退を危惧
インボイスは消費税の新制度。特に売り上げ1000万円以下の事業主とその発注者に、新たな税負担を求めている。エンターテイメント業界だけでなく、運輸や建設、伝統工芸などあらゆる業界の個人事業主と、彼らに発注している企業が影響を受ける(制度の詳細)。
声優業界への影響も甚大だ。VOICTIONのアンケートによると、インボイス制度による負担増で、廃業を検討している人声優は27%と4人に1人以上に上る。
「インボイスは問題だ」――VOICTIONを立ち上げた声優の甲斐田裕子さんは、以前からそう思っていた。長引く不況で、キャスト費は削られ続けている。インボイスが始まれば、収入の低い若手の業界離れが進み、コンテンツの質低下、ひいては文化の衰退につながると、危機感を持っていた。
が、当初は実名で声を上げる勇気がなかった。声優が政治に口を出すと批判されるだろうし、「キャラクターのイメージと違う」などと仕事が減る可能性もある。甲斐田さんは課税事業者で、インボイス制度の直接の影響は受けない立場でもあった。
制度の実施が2023年10月に迫る中、インボイス反対を掲げる他の団体に背中を押された甲斐田さんは、声優業界の未来のために、名前と顔も出し、反対の声を上げることにした。同じ思いを持つ声優の岡本麻弥さん、咲野(さくや)俊介さんと3人で発起人になり8月、VOICTIONを発足。メンバーを増やしながら活動してきた。
“メール攻撃”反応ゼロ 人づてで議員に陳情
最初に行ったのは、与党議員への“メール絨毯爆撃”だ。与党はインボイスを推進する立場だが、「法律を変えてもらうには、与党に話を聞いてもらうしかないと考えた」(咲野さん)。
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