AI契約書レビューはどこまで使える? 法務SaaS完全理解マニュアル LegalForce&GVA assist編:リーガルテック最前線(3/3 ページ)
今回はAI契約書レビューについて取り上げる。AI契約書レビューシステムに関して「違法の可能性がある」という見解が示されたことを受け、一部報道においてはまるで違反であるかのような伝え方がなされた。この点も今回解説していく。
GVA assist
GVA TECH社が提供するGVA assist(ジーヴァ アシスト)は、「読む・直す・仕上げる」という契約書レビューの各工程を簡単にするための機能を提供するAI契約書レビュー支援クラウドである。Webサイトには「導入企業・法律事務所 400以上」との記載があり、法律事務所向けプランも目立つ箇所に表示されるなど、法律事務所色が強いプロダクトである。
LegalForceと大きく異なる点は、契約書レビューにおける業務プロセス全体の効率化ではなく、契約書をレビューするという一点にフォーカスしていることだ。
Webサイト上では、AIによるリスク検知で契約書を「読む」負担を軽くし、修正例・譲歩案を提示して「直す」負担を軽減し、表記ゆれや条番号ずれを一括修正して「仕上げる」負担を軽くする、という形で法務担当者や弁護士にしか分からないマニアックなポイントが紹介されている。法務のためのプロダクトであることを全面に押し出している。
契約書の雛型が豊富である点もアピールポイントになっているが、前述の機能と合わせてあくまでも契約書レビューの「支援」をするというニュアンスが徹底されている。弁護士法72条を意識していることは間違いないが、それ以上に「AI契約書レビュー」というものの現時点での限界を認識した上で、これはあくまでも契約書レビュー業務を行う法務担当者や弁護士の支援をするプロダクトに過ぎない、という提供側の強いこだわりが感じられる。
弁護士でもある代表の山本俊氏もインタビューなどで「現段階のAI契約書レビューは弁護士業務を代替するものではない」と語っている通り、忌憚(きたん)のない言い方をするのであれば、単に理想の雛形との比較チェックを超高速で行なっているに過ぎない。そのチェックや修正作業が法務担当者や顧問弁護士の業務を圧迫していることは事実であるが、そこでのミスが重大なリスクにつながりかねない法務において、手抜きは許されない。そういう現実を直視した上で、型通りのチェックや修正作業はそれが得意なAIの力を借りましょう、というのがGVA assistのスタンスである。
また、事前に用意された雛型通りのチェックだけでなく、自社の契約審査基準に合致するようにカスタマイズを加えることが可能になっている。杓子定規で使いにくいものではなく、法務に超有能なアシスタントを雇うような位置づけのプロダクトである。
AIは魔法ではない。とはいえ、人間よりも正確なチェックや検索ができる機能を活用しないのはもったいない。道具としてのAIの使い所を心得ている、という自信がGVA assistからは伝わってくる。法律事務所やスタートアップの法務などの少数精鋭のチームが、限られたリソースを有効に活用するために導入を検討するプロダクトである。
次回は、契約書の作成と管理についてお届けする。
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