「Dropbox」と「Box」、老舗クラウドストレージを企業があえて使い続ける納得の理由:クラウドストレージSaaS比較(1/4 ページ)
今回のSaaS対決では、クラウドストレージを祖業とする両社が、なぜ競争が激化するマーケットにおいて生き抜いてこれたのか、両社の強みはどこにあるのかを掘り下げていく。
クラウドコンピューティング(いわゆる「クラウド」)は、インターネットなどのネットワークを通じてシステムを利用する形態のことだ。SaaS(サース)やスマートフォンなどは全てこの「クラウド」という概念がなければ存在しなかったと言っても過言ではない。
20世紀後半には概念として提唱されていたクラウドを商業的に確立したのは、Google(現在はAlphabet)で当時のCEOであったエリック・シュミットだったといわれている。
私たちの生活や仕事を劇的に便利にしたクラウド。Gmailを使えばスマホでもPCでも同じメールを送受信できるし、YouTubeがあればダウンロードすることなく動画を見ることができる。あらゆるITサービスがクラウドありきで構築されているため、その恩恵を意識することはもはやなくなったが、多くの人が最初にクラウドの恩恵を感じたのはクラウドストレージだったのではないだろうか。
2000年代はPC本体のストレージの容量も小さく、メールにも重たいファイルを添付することができなかった。若い人には信じられないかもしれないが、個々人でファイルをやり取りする際はUSBメモリに保存して、物理的にやり取りをするしかなかったのである。
そんななか、10年前後に彗星のごとく登場したDropboxは筆者にとっては本当に魔法のように感じられた。PC上にあるファイルをクラウドを通じて簡単に共有できる上に、もしPCが壊れてしまっても、そのファイルはクラウド上に保存されているため新しいPC上に復活させることができるのである。
クラウドストレージは今では珍しくもなくなり、GoogleDrive(Google Workspace)やOneDrive(Microsoft Office365)など、各パッケージを導入すればタダ同然で利用することができるものも増えてきた。そのような状況にあっても、特にビジネス利用のシーンでは老舗のDropboxとBoxはいまだに大きな存在感を示している。
今回のSaaS対決では、クラウドストレージを祖業とする両社が、なぜ競争が激化するマーケットにおいて生き抜いてこれたのか、両社の強みはどこにあるのかを掘り下げていく。
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