「Dropbox」と「Box」、老舗クラウドストレージを企業があえて使い続ける納得の理由:クラウドストレージSaaS比較(2/4 ページ)
今回のSaaS対決では、クラウドストレージを祖業とする両社が、なぜ競争が激化するマーケットにおいて生き抜いてこれたのか、両社の強みはどこにあるのかを掘り下げていく。
Dropbox――ローカル保存したファイルの同期を重視
米国に本社を置くDropbox社は、マサチューセッツ工科大学の学生であったドリュー・ハウストン(現CEO)とアラシュ・フェルドーシ(現CTO)が2007年に設立した会社だ。初期のYコンビネータ(ポール・グレアムらによって設立されたシードアクセラレータプログラム)卒業生の中での最高の成功例だといわれている。
11年には正式に日本語対応も行い、18年にNASDAQに上場している。Dropboxは7億人以上のユーザーに利用されており、クラウドストレージの最大手である。
Dropboxが生まれたきっかけは、当時24歳だったドリュー・ヒューストンが、USBメモリを壊して大事なデータを紛失しそうになったことである。物理的なデバイスを持ち歩くことなくデータ共有するためにはどうすればいいか、という着眼点が世界的なサービスを生み出した。
端末に保存したファイルがあっという間にクラウド上で同期されるデモ動画は、リリース直後から世界中で「魔法のようだ」という驚きをもって拡散され、Dropboxはクラウドストレージという分野のトップランナーになった。
Dropboxの特徴は、PC上にローカル保存したファイルをクラウド同期することを重視している点だ。Dropboxのアプリをダウンロードすると作成されるDropbox専用フォルダにファイルを置くだけで、クラウド同期が開始される。複雑な設定や操作は一切不要である点が多くの人々の支持を集めることとなり、Dropboxはまずは個人向けのクラウドストレージサービスとして盤石の地位を確立した。
また、ネットワークが現在ほど高速でもなく、Wi-Fiなども普及していない10年代前半においては、インターネットに接続していない環境でPCを操作することは頻繁にあった。そんなとき、Dropboxであれば同期されて最新になったファイルがローカル保存されており、滞りなく作業を進められた。
デメリットは、PC本体に同期ファイル分の空き容量が必要なことと、ファイルの自動同期で大量の通信量を消費するため、ポケットWi-Fiなどで利用した場合はすぐに通信制限に引っかかってしまうことである。
ビジネス向けのプランでは「スマートシンク」という機能を導入し、クラウド上のファイルを選択してローカルにダウンロードする機能も提供している。
Dropboxの利点は、ITリテラシーが高くないユーザーであっても迷わないで操作できるシンプルな構造にある。大きな容量を比較的安価に少人数からでも使えるため、個人事業主やビジネスマンの副業でも活用されることが多いクラウドストレージである。
関連記事
- 満足度の高いオンラインストレージ Google DriveでもDropboxでもない1位とは【2022年10月版】
ユーザー満足度の高いオンラインストレージはどれ? IT製品レビューサイト「ITreview」に寄せられたレビューを基に、ランキング形式でまとめた。 - 請求書受け取りSaaSでチェックすべき3つの観点 sweeep、バクラク請求書、invox、Bill Oneを比較する
社会変化の中でここ数年の進化が目覚ましいのが、受け取った請求書を処理するSaaSである。今回は受取請求書SaaSを「OCR特化」および「OCR+オペレーター入力補助」の2つに大別した上で、それぞれ2つずつ、計4つのSaaSを取り上げる。 - 契約書作成ツールはWordを超える? 法務SaaS完全理解マニュアル ContractS CLM&Hubble編
ここまで契約書の締結、契約書のレビューという順番でリーガルテックを見てきて、次に紹介するのは契約書の作成と管理である。 - AI契約書レビューはどこまで使える? 法務SaaS完全理解マニュアル LegalForce&GVA assist編
今回はAI契約書レビューについて取り上げる。AI契約書レビューシステムに関して「違法の可能性がある」という見解が示されたことを受け、一部報道においてはまるで違反であるかのような伝え方がなされた。この点も今回解説していく。 - どっちが便利? 法務SaaS完全理解マニュアル クラウドサイン vs. DocuSign編
近年リーガルテックと呼ばれる法務関連SaaSが盛り上がりを見せている。今回は電子契約、AI契約書レビュー、契約書の作成と管理の3つの分野で各2つ、合計6つのSaaSを取り上げる。 - マネーフォワード クラウド会計 vs. freee会計(前編)
クラウド会計という分野では必ず比較されるMFクラウドとfreeeであるが、「会計ソフト」という言葉で一括りにすることができないほど、思想や世界観は異なっている。本稿では両者の機能比較に加えて、その背景にある思想やターゲットなどをひも解いていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.