なぜ人々は、ChatGPTという“トリック"に振り回されるのか? Google「Bard」参戦、チャットAI戦争の行方:清水亮の「世界を変えるAI」(2/8 ページ)
OpenAIが2022年に発表した対話型AI「ChatGPT」の衝撃は、米国ビッグテック最強の一角であるGoogleを動揺させた。Googleは急ぎ「Bard」と名付けたチャットボットを投入し、巻き返しを図る。
Meta社の研究機関である旧Facebook AI Research(FAIR)が公開している「ParlAI」は、かなり前から深層学習によるチャットボット機能を搭載していた。このParlAIのチャットボットは、Amazon Mechanical Turkで集められたクラウドワーカーとの会話をデータセットとして学習している。
このデータセットは、まずクラウドワーカーが生徒役と教師役に分かれ、教師役はWikipediaのランダムな項目について説明文を要約し、生徒役は要約に対して質問、教師役は質問の答えをWikipediaの記述から探して答える、という大掛かりなものだ。これが2年も前のことである。
最近、Facebook AI ResearchあらためFundamental AI ResearchことFAIRのヤン・ルカン(AIの第一人者として知られる)は、「ChatGPTは革命的ではない」という主張をした。自分達も数年前から深層学習による会話データセットの構築とそのオープン化を推進していたわけだから、これは当然の主張だろう。FAIRは今現在、最も主流といわれる深層学習フレームワークPyTorchの開発元でもある。
そしてルカンはこうも言っている「規模を大きくすれば会話の質が上がるわけではない」と。
なにせ、深層学習によるチャットボットを何年も作っているチームのトップの発言である。筆者の直感も同様だ。だからChatGPTの延長線上に、果たして欲しいものがあるのかどうかには疑問が残る。
なぜ規模を増やすだけではダメだと思うのか、そして同時に、なぜ人々は、ChatGPTという“トリック"に振り回されてしまっているのか、それをひも解くにはチャットボットの歴史を振り返る必要がある。
関連記事
- 有能な秘書か、大ぼら吹きか 「ChatGPT」をスプレッドシートで使えるアドオンを試してみた
ビジネスツールであるスプレッドシートからChatGPTが呼び出せると、景色はちょっと変わる。行列の見出しを入力するだけで、自動で無限に欲しい情報が手に入る。 - GoogleのChatGPT競合「Bard」のデモ回答に誤り──天文学者らが指摘
Googleが発表したChatGPT競合の会話型AIサービス「Bard」の発表時に披露したサンプル回答に誤りがあったと複数の専門家が指摘した。太陽系外惑星の画像をとらえたのはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が初という部分だ。 - 日本を画像生成AIで再現する 「自分の見た景色」を学習したAIは強力な思い出再生装置に
AIで漫画を書こうとするとひとつ不便なことがある。StableDiffusionの元になっている学習データは「全世界」の画像を使っているので、日本人がイメージするような「郵便局」とはまったく異なるイメージになってしまう。そこで街のあちこちの景色を写真に撮った。これをAIに学習させて、独自の日本的な画像生成AIを作ろうというのだ。 - 会話で検索できる「新しいBing」、Microsoftがプレビュー公開 ChatGPT開発元の次世代モデル採用
MicrosoftはOpenAIの言語モデル採用の新モデル「Prometheus」採用のチャットbot付き「新しいBing」を発表した。英語版Bingで限定プレビューを試せる。同時に発表の「新しいEdge」には、AIを使って表示内容を要約したり新たなコンテンツ作成を支援する機能も搭載する。 - Google、OpenAIの「ChatGPT」競合「Bard」を限定公開
Googleは、「ChatGPT」と競合する“実験的な会話型AIサービス”の「Bard」の提供を開始する。まずは限定公開だが、「向こう数週間中により広く公開する」。また、Google検索にクエリにテキストで答える新AI機能を間もなく追加する。 - AIでどこまでできる? 絵心のないプログラマーが「ChatGPT」と「作画AI」でマンガを描いてみた
クリスタにAI作画機能搭載が見送られたと聞いて、なるほどなあと思いつつ、では絵が全く描けない筆者が、AIを使って漫画を書くことはできるのか、実際にやってみることにした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.