連載
Teslaは低価格EV開発、BYDは高級ブランド新設 “EV界のトヨタ”になるのはどこか?:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(3/5 ページ)
Teslaは3月1日、低価格の小型EVを数年内に投入する計画を発表した。一方、同社を猛追する中国BYDは、昨年末に高級ブランド参入を宣言。EV業界でのTeslaの一強体制は崩れつつあり、その背景にはEV市場の拡大とともに、ライバルが台頭したことがある。
EV業界のパイオニアとして一強体制を築いてきたTeslaは、ブランド力を背に小刻みに値上げを続けてきた。だが、22年の販売台数は同40.3%増の約131万台にとどまり、140万台の年初目標を達成できなかった。同年末の時価総額も21年秋から7割以上減った。
Teslaの22年の販売目標が未達に終わったのは、同社の世界販売の3分の1を占める中国市場の混乱が大きな要因だ。ゼロコロナ政策は生産や物流を麻痺させ、消費を低迷させた。
とはいえ、中国乗用車市場信息聯席会(中国自動車産業の業界団体)の試算によると、Teslaの22年の中国での販売台数が同37.1%増の43万9770台だった一方、中国で同年の新エネルギー車(EV、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)の3種)の市場は93.4%拡大しており、販売台数の伸び率でTeslaを上回った中国メーカーは少なくない。
Teslaの中国市場での勢いの陰りは、ゼロコロナ政策や景気減速だけでなく、EV市場の拡大とともにライバルが台頭したことが背景にある。
関連記事
- Apple減収減益でもiPhoneシェア拡大、「全員敗者のスマートフォン市場」
22年はグローバルでのスマートフォン販売台数が、過去10年で最低水準となった。また10〜12月期は強者Appleも減収減益となったが、グローバルでのシェアを伸ばしている。なぜだろうか。背景を紹介する。 - 中国版ChatGPT、異常な盛り上がりでカオス 出オチでClubhouseの二の舞も……
米OpenAIが開発した、自然な対話や文章作成ができる対話型AI「ChatGPT」が世界に衝撃を与えている。中国でも大きな変革のうねりに乗り遅れまいとお祭り騒ぎで、カオスっぽくなっているが、中国の反応は日本のそれとはベクトルが異なる。 - 中国で「日本のガソリン車」が再評価、中古市場拡大でリセールバリューに注目
中国汽車工業協会が発表した1〜11月の自動車販売台数によると、EVなど新エネルギー車の販売台数は600万台を突破。11月単月では新エネ車の販売比率は33.8%に達する。一方、中国の中古車市場の整備が進んでおり、残価率の高さから日本メーカーのガソリン車が再評価されている。 - 中国政府がIT企業の規制を緩和、大手のIPOへ前進か!?
2023年は、20年11月から2年以上続いた中国政府によるIT業界の締め付けが緩みそうだ。中国の新年に当たる春節を前に、政府の方針転換を示すシグナルが相次ぎ点灯。アント・グループや配車サービス最大手DiDiのIPO手続きも前進すると期待が高まっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.