Teslaは低価格EV開発、BYDは高級ブランド新設 “EV界のトヨタ”になるのはどこか?:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(4/5 ページ)
Teslaは3月1日、低価格の小型EVを数年内に投入する計画を発表した。一方、同社を猛追する中国BYDは、昨年末に高級ブランド参入を宣言。EV業界でのTeslaの一強体制は崩れつつあり、その背景にはEV市場の拡大とともに、ライバルが台頭したことがある。
マスク氏「中国企業がTeslaに次に来る」
マスクCEOは1月末開催の22年10〜12月期決算発表後にライバルについて聞かれ、「中国の自動車メーカーはハードでスマートな仕事をする。中国の会社がTeslaの次に来る可能性が最も高い」と答えた。
具体的な企業名こそ出さなかったが、「Teslaの次に来る中国企業」の最有力候補がBYDであるのは間違いない。BYDの22年の新エネ車(商用車を含まず)の販売台数は前年(59万4000台)の3倍を超える185万7000台に急拡大した。
そのうちEVは同2.84倍の91万1000台。EVだけで見るとTeslaの約131万台とはまだ差があるが、「Teslaに対抗し得る初めての挑戦者」と世間に認められるまでに成長した。
絶好調のBYDだが、ほんの2、3年前まで同社は「コスパが売りの低価格メーカー」だった。3年前の今頃は自動車事業が振るわず、医療用マスクの生産で稼いでいたほどだ。商用車でEVには早くから進出していたものの、実際は20年までガソリン車の生産がEVを上回っていた。
そこから本気のEVシフトに取り組み、22年3月にはガソリン車の生産を終了。昨年以降は海外進出も加速し、今年1月末には日本でも、e-SUV「ATTO 3(アットスリー)」を発売した。業界関係者は「BYDはどちらかといえばダサい印象だったのに、数年間で企業イメージががらっと変わった」と口をそろえる。
BYDがTeslaと肩を並べるメーカーになるために、海外進出と両輪で進めているのがハイエンドへの延伸だ。
昨年末に立ち上げを発表した高級ブランド「仰望」は車両価格80〜150万元(約1600万〜3000万円)のEVを展開し、トヨタ自動車のレクサスのように独立した販売・経営体制を予定している。さらに2月末、BYDが内部で「Fブランド」呼ぶ新ブランドの準備を始めていると現地メディアが報じた。FブランドもBYDから独立して運営され、「BBA」(BMW、Benz、Audiの頭文字)と同等の価格で従来のBYDとは全く違う革新的なEVを開発することを目指しているという。
関連記事
- Apple減収減益でもiPhoneシェア拡大、「全員敗者のスマートフォン市場」
22年はグローバルでのスマートフォン販売台数が、過去10年で最低水準となった。また10〜12月期は強者Appleも減収減益となったが、グローバルでのシェアを伸ばしている。なぜだろうか。背景を紹介する。 - 中国版ChatGPT、異常な盛り上がりでカオス 出オチでClubhouseの二の舞も……
米OpenAIが開発した、自然な対話や文章作成ができる対話型AI「ChatGPT」が世界に衝撃を与えている。中国でも大きな変革のうねりに乗り遅れまいとお祭り騒ぎで、カオスっぽくなっているが、中国の反応は日本のそれとはベクトルが異なる。 - 中国で「日本のガソリン車」が再評価、中古市場拡大でリセールバリューに注目
中国汽車工業協会が発表した1〜11月の自動車販売台数によると、EVなど新エネルギー車の販売台数は600万台を突破。11月単月では新エネ車の販売比率は33.8%に達する。一方、中国の中古車市場の整備が進んでおり、残価率の高さから日本メーカーのガソリン車が再評価されている。 - 中国政府がIT企業の規制を緩和、大手のIPOへ前進か!?
2023年は、20年11月から2年以上続いた中国政府によるIT業界の締め付けが緩みそうだ。中国の新年に当たる春節を前に、政府の方針転換を示すシグナルが相次ぎ点灯。アント・グループや配車サービス最大手DiDiのIPO手続きも前進すると期待が高まっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.