GPT-4が労働市場に与える影響と各職種のリスク評価──OpenAIの研究者が論文発表
「GPT-4」を手掛けたOpenAIの研究者が「GPTはGPT:LLMの労働市場への影響の可能性に関する初期の考察」と題した論文を発表した。米国の労働力の約8割が、少なくとも仕事の1割にGPT導入の影響を受ける可能性があるとしている。影響を受けやすいのはジャーナリスト、翻訳者、Webデザイナーなど。
大規模言語モデル(LLM)の「GPT-4」を手掛けた米OpenAIとペンシルベニア大学の研究者らは3月17日、「GPTはGPT:LLMの労働市場への影響の可能性に関する初期の考察」と題した論文を公開した。「GPT(Generative Pre-trained Transformer)モデルと関連技術が米国の労働市場に与える潜在的な影響を調査」したとしている。
調査の結果、米国の労働力の約80%が、GPTの導入によって少なくとも仕事の10%に影響を受ける可能性があり、約19%の労働者は仕事の50%に影響を受ける可能性があることが示されたという。
ほぼすべての職種に影響するが、特に現在高収入な職種のリスクが高いとしている。
調査は、学習達成度を表を用いて測定するルーブリック評価によって、職業別の人間の専門知識とGPT-4を使った場合を比較した。
方法は、1016の職業について、職業ごとに測定するタスクを決定し、人間が特定のタスクを実行するのに必要な時間を、GPT-4を使うことで少なくとも50%短縮できるかどうかを調査するというもの。
その結果、プログラミングとテキスト執筆のスキルはLLMの影響を受けやすく、科学的、批判的思考スキルを必要とする職業は影響を受けにくいことが示されたという。
つまり、数学者、ジャーナリスト、翻訳者、作家、Webデザイナー、会計士などは影響を受けやすく、グラフィックデザイナー、SEO担当者、財務管理者などは影響を受けにくい。
ただし、研究者たちは、この結果にはいくつか制限があることも認めている。そもそもラベル付けをしたアノテーターは対象とした職業に属しておらず、タスクを単純なラベルで要約することでバイアスが生じた可能性がある。また、GPTがまことしやかな情報をでっち上げたとしてもタスクを実行したとみなした可能性がある。
それでも、「われわれの分析は、GPT-4のようなLLMの影響が広範囲に及ぶ可能性が高いことを示している。(中略)LLMの能力開発を停止したとしても、LLMの成長による経済効果は持続し、増加すると予測する」としている。「機能が進化し続ける中で、GPTの経済への影響は継続し、増加する可能性があり、政策立案者にとってその軌跡を予測し、規制する課題が生じるだろう」とも。
論文にはGPT-4自身によるまとめも掲載されている。それをGPT-4に翻訳させたところ、「GPTは深刻な変革を引き起こし、技術成長の可能性を引き出し、タスクに浸透し、職業に大きな影響を与えます。本研究は、GPTの潜在的な軌道を探るために、特に米国労働市場において、タスクのGPTへの露出を評価する画期的な基準を提示しています」となった。
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