「東京電力」と検索すると「東京電“カ”」が広告枠に いったい何者? 東電に聞いた
Google検索で「東京電力」と調べると、広告を表示するスポンサー欄に「東京電カ」(漢字の“力”ではなく片仮名の“カ”)というWebサイトが現れることがある。いったい何者か。東京電力などに問い合わせを行った。
引越し準備をする人が増える3月、電気の開通手続きを手配する人も多いかと思う。その際にGoogle検索で「東京電力」と調べると、広告を表示するスポンサー欄に「東京電カ」(漢字の“力”ではなく片仮名の“カ”)というWebサイトが現れることがある。
記者も検索したところ、3月15日午後4時時点で確かにこのような結果になることを確認できた。この際、スポンサー欄には本物の東京電力と“東京電カ”の2件のサイトが表示された。本物の東京電力は「tepco.co.jp」のドメインを使っているのに対し、電カでは「denkigas.net」のドメインが使われている。謎のサイトの文言は「【開始専用センター】東京電カ - でんき開始受付センター」としている。
電カのサイトにアクセスしてみると「東京電力エリア 電気ガス開始受付センター」というWebサイトにつながった。ページトップには「電気の引越し手続き」とあり、電気の開通手続きの窓口や手続きの流れを説明する内容が記載されていた。一見すると、東京電力の電気契約の窓口かのように思えるが、同サイトの運営者情報を見ると「LOHASTYLE」という企業の名前が掲載されている。
同社の業務内容は「引越しに伴う各種手続きの取次」としている。見たところ、サイト内の問い合わせフォームから、氏名や電話番号、メールアドレス、引っ越し先の都道府県、利用開始予定日などを入力することで、電力会社に取次を行うというサービス内容のようだ。利用料は無料という。
一方、Webサイト内を探したが、東京電力との関わりについての記載は見られなかった。LOHASTYLEのWebサイトを見ても資本関係にある事実などは確認できない。では一体なぜ「東京電カ」という紛らわしい名称で検索広告を提示しているのだろうか。
LOHASTYLEに話を聞くべく、電話で問い合わせを行ったところ「広報担当がいないため、会社として回答することは難しい」と返事があり、それ以上の回答を得ることはできなかった。
東京電“カ”は1社だけではなかった
実は東京電カという紛らわしい検索広告はこれ以外にも存在する。記者が記事執筆する間には他にも2件、東京電カで出稿する検索広告を確認できた。「東京電カ - 電力開始手続きはこちら」「東京電カ - 電気の引っ越し手続き専用窓口 - 新規の方はこちら」と表示され、ドメインはそれぞれ「denki-tetsuzuki.com」「hikkoshi-tetsuzuki.com」で別のものが使われていた。
一方、この2つのドメインのWebサイトは、内容が非常に酷似している。いずれも「東京電力をご利用中のお客様」「東京電力エリア お手続き専用窓口」などと記載。フォントなどに微妙な違いも見られるが、大まかな部分はほぼ同じといえるデザインだ。サイトの内容はLOHASTYLEと同様、電気の開通手続きの取次サービスを案内するものだった。
しかし運営会社はそれぞれ異なる記載で「INEライティング」と「引越手続き.com」、サイト運営責任者もそれぞれ別人の名前が表記されていた。
東京電力にこれら一連のドメインについて確認してみたところ「ご教示いただきましたサイトは、弊社グループのサイトではございません」と回答。また、電気ガス開始受付センターについては、グループの販売代理店や関係会社、パートナー企業でもないと関係を否定した。
Googleなどの検索エンジンは検索キーワードに対して適したWebサイトを表示するアルゴリズムを持つ。このアルゴリズムが有利に働くよう調整する方法をSEO(検索エンジン最適化)という。一方、それらの結果よりもさらに上位に表示される広告枠も存在する。今回の件はこの仕組みを利用し、東京電力を利用したい人に対して紛らわしい文言で誤認させ、サイトへの誘導を狙ったものと思われる。
東京電力のドメインは「tepco.co.jp」。東京電力と電気の契約手続きを交わしたい場なら、Webサイトのドメインをよく確認するといいだろう。また、電カを名乗るサイトでは、新規申し込みは電話かWebで問い合わせするよう誘導している。東京電力では、1カ月先までの開通手続きはWeb、それ以外はカスタマーセンターへ電話するよう案内している。そのためWebサイトの体裁の違いにも要注意だ。
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