取引デジタル化の最前線 インフォマートの戦略とは?:SaaS対決特別編(2/3 ページ)
BtoBプラットフォームは、企業間のやりとりをデータ化し業務効率化を図るシステムであり、請求書・契約書などデジタル化が特徴。大手企業が導入すれば、取引先も参加しやすくなり、効率的にID数を増やせる。しかし、導入タイミングが重要であり、既に他のシステムを導入している企業が対象となる場合、並行利用が問題となることもある。インフォマートはフード業界向け電子商取引プラットフォームで成功し、コロナ禍や電子帳簿保存法の導入で、企業のデジタル化ニーズを満たすプロダクトとなっている。
BtoBプラットフォーム デジタル化への強い信念
BtoBプラットフォームは、企業間で発生するあらゆるやりとりをデータ化することで、双方の企業の業務効率化を実現するためのシステムである。見積書・契約書・発注書・納品書・請求書という企業間で発生するあらゆるやりとりをプラットフォーム上で完結させることができることが大きな特徴だ。
請求書発行システムが乱立し、形式もバラバラな請求書がPDFや紙でやり取りされるため、今度は請求書を受け取った企業側にそれを処理するためのシステムが必要になる。これが受取請求書サービスが発展してきた経緯だったことは、先日の記事でも紹介した。
電子マネーにおける◯◯Payの乱立や、LINEやFacebook Messengerなどの複数チャットを使わざるを得ない状況など、規格が統一されていない状況ではさまざまなサービスが立ち上がってくる。市場規模が小さければあっという間に1つのサービスに統一されてしまうのだが、電子マネーやチャットのように巨大なマーケットが存在する場合は、複数のサービスが共存し得る。それは請求書発行システムも同様である。
そのような状況において、発行側だけでなく受取側にもIDを発行してプラットフォームに参加してもらうのは容易なことではない。フード業界の本部とFC加盟店のように、主従関係がハッキリしている場合でなければ基本的には成立し得ない。実際、BtoBプラットフォームの導入企業のロゴには、超大手企業がズラッと並んでいる。大手企業が導入すれば、その取引先もプラットフォームに参加するという流れができる。
大手企業にとっては、自社でシステムを開発するには時間もお金もかかりすぎるため、BtoBプラットフォームを活用して、自社と取引先とのやり取りをデジタル化するメリットは大きい。取引先にとっても、BtoBプラットフォームを使ってみると、これまでわざわざ印刷・郵送が必要だった請求書や契約書などのやり取りがすべてデジタル化することができるため、結果として業務効率は上がる。
インフォマートとしても、大手企業が利用するとその取引先もBtoBプラットフォームを利用することになるため、効率的にID数を増やせる。また、いきなりあらゆる取引をBtoBプラットフォーム上にのせなくても、まずは請求書から、まずは契約書から、というふうに少しずつ広げていけることも特徴だ。
BtoBプラットフォームがターゲットとする領域は、規格ややり方に対する企業のこだわりがなんの競争優位性も発揮しない領域である。つまりは、誰かが統一規格を作り、そこで商取引が完結する環境を構築することで、業務は効率化され全員がハッピーになる。提供側としては流通量の多いプラットフォームを構築することができれば、客が客を呼び規模は拡大し、それが競争優位性になる。
いわゆるネットワーク効果をそのまま体現したような戦略ではあるが、言うは易く行うは難しい。フード業界向け電子商取引プラットフォームの基盤を築いていたインフォマートでなければ、10年代前半にBtoBプラットフォームを立ち上げることは難しかったことだろう。
インフォマートが当初フード業界向けに提供していたサービスには、印刷やPDF化をするボタンがなかったという逸話がある。双方の取引はプラットフォーム上で完結するため、発注書・納品書・請求書という形でわざわざ書き出す必要性はない、という強い信念がここから見てとれる。
BtoBプラットフォームは、時代の波に乗って存在感を高めており、電子インボイスなどが実現する際においては、主要なプレイヤーの1つになっていることだろう。
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