ネット専用「Tracersオールカントリー」は実質コスト最安を目ざすのか? 日興AMに聞く(3/3 ページ)
競合eMAXIS Slimオールカントリーの、約半分の信託報酬が話題の「Tracersオールカントリー」の設定が始まった。日興アセットマネジメントは、なぜここまで低コストな投信を投入するのか。同社の商品開発部長兼ETFビジネス開発部長の有賀潤一郎氏に聞いた。
実質コストをどう見るか
――指数のライセンス料が信託報酬に含まれていない。これによってその他コストが膨らむと思うが、その意図と開示方法、目安はどうか。
有賀氏 日本に上場しているETF(上場投資信託)では、ほぼ全社、信託報酬の外に指数のライセンス料を乗せている。また公募投資信託でも、複数の会社がこの形でやっている。当社でも、現在は大半がその形だ。
ETFでは普通のやり方で、このファンドで特別なやりかたをしているわけではない。
――実際のところ、オールカントリーインデックス投信としてコスト最安を目指すのか?
有賀氏 とにかくコスト削減を目指す。信託報酬0.05775%+その他上限0.1%が上限となるのは事実だが、それはあくまで上限だ。さまざまな工夫によってどこまで低くできるかだと思う。指数利用料は、一般的には固定と率の組み合わせが多い。規模が拡大することで、コストが下がる部分もある。
具体的なコストの総額は、1年後の運用報告書で出すが、そこまで投資家の方に待ってもらっていてはもったいないので、開示またはやり方も含めた工夫の余地を議論している。
――低コスト化により、継続を不安視する声もある。相当な額が集まるまでは赤字ではないかと思うが、早期償還のリスクについてどう捉えたらいいのか。
有賀氏 大きな黒字になるには大きな金額が必要だが、マザーが存在しているので逆に大きな赤字にはなりようがない。ファンド個別で損益は見ていくが、損益がどうだからと単純に償還するというものではない。運用の継続性については、残高を増やして安心していただけるようにしつつ、適切な情報開示、情報発信に務めていきたい。規模感としては相当大きいものを目指さなければいけない。
関連記事
- eMAXIS Slim”オルカン“、Tracers対抗の信託報酬引き下げは行わず 「公正な比較対象とならない」
「Tracersオールカントリーに追随した信託報酬の引き下げは行わない」。競合投資信託である「eMAXIS Slim オールカントリー(全世界)」を運用する三菱UFJ国際投信は、ITmediaの取材に対し、こうコメントした。 - ネット専用投信「Tracers オールカントリー」、eMAXIS Slim“オルカン”の約半分のコストで登場
日興アセットマネジメントは4月26日から、ネット販売専用の投資信託「Tracers MSCI オール・カントリー・インデックス(全世界株式)」の運用を開始する。10日に提出した有価証券届出書で明らかになった。 - eMAXIS Slim米国株式、純資産額1兆8000億円超えで投信全体のトップに ネット証券で246万人が保有
三菱UFJ国際投信が運営する投資信託「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が、2月6日に純資産額で投資信託の1位となった。金額は1兆8065億円に達した。 - eMAXIS Slim米国株式、信託報酬を値下げ 競合に追随
三菱UFJ国際投信は3月15日、米国株価指数連動のインデックスファンド「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の信託報酬を引き下げると発表した。 - アクティブの反対はインデックスではない? 日興AM、ルールベースの新シリーズ「トレイサーズ」投入の狙い
日興アセットマネジメント(AM)が、新たな投資信託のシリーズを投入した。名称は「トレイサーズ」。ファンドマネージャーが銘柄を選定して投資する、いわゆるアクティブファンドに対して、あらかじめ定めたルールに沿って売買を行う「ルールベースファンド」だ
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.