Google Cloudは日本のゲーム市場をどう捉えている? 初の国内向け報道説明会で語ったこと
日本の報道関係者向けに初の説明会を開いたGoogle Cloud。そこで明かした、ゲーム業界向けの戦略の全体像とは。
サービス提供の黎明期からゲーム会社のヘビーユーザーを抱えるGoogle Cloud。一方、近年までグローバルで統一したゲーム業界向けのビジネス戦略は存在しなかった。しかしここに来てゲーム業界全体のクラウドシフトが加速していることを受け、同社製品の強みやパートナーの力、先進ユーザー事例など、ゲーム向けソリューションにおける同社の提供価値を改めて整理。顧客基盤の拡大を加速させようとしている。
4月13日には、日本の報道関係者向けに初の説明会を開き、ゲーム業界向けの戦略の全体像を明らかにした。グローバルの他の市場と比べてクラウド活用が遅れていると指摘されることの多い日本市場だが、米Google Cloudのジャック・ビューザー氏(ゲームインダストリーソリューション ディレクター)は「日本のゲーム企業が先進テクノロジー活用のトップ集団だ」と話す。Google Cloudは日本のゲーム業界をどう捉えているのか。
「ライブサービスゲームこそがゲーム業界の未来」
ゲームを取り巻く環境についてGoogle Cloudは「ライブサービスゲーム(Game as a Service)こそがゲーム業界の未来である」とみているという。ライブサービスゲームとは定期的にコンテンツが追加されるオンラインゲームのような、継続して運営されるゲームを指す。
米data.aiと米IDCの調査によると、2022年のモバイルゲームとPCゲームの売り上げランキングではいずれもライブサービスゲームが上位10位を独占しているという。スマートフォンの普及がライブサービスゲームの普及を促し、ユーザーのゲーム体験そのものを大きく変えたとビューザー氏は指摘する。
「従来型のゲームはプレーヤーが数カ月夢中になって遊んだら用済みになってしまうことが多いが、ライブサービスゲームはプレイヤーが長期間楽しめるように新しいコンテンツの追加やアップデートが頻繁に行われる。ほとんどのモバイルゲームはライブサービスゲームだが、ここからゲームに触れた新しいプレイヤーがPCや家庭用ゲーム機などの新しいプラットフォームを発見し、そうしたプラットフォーム上で遊ぶ場合にもライブサービスゲームの体験を期待するようになっている」
プレイヤー側のニーズとして、スマートフォンとPC、もしくはスマートフォンと家庭用ゲーム機など、「複数のプラットフォームをまたいだゲーム体験」を求めるトレンドもあるという。一連の背景を踏まえ、Google Cloudは多くのゲーム会社がビジネスモデルをライブサービスゲームにシフトしようとしていると分析している。ビジネスモデルの変更に伴い、長期的な運営を前提にクラウドの導入を検討すると踏んでいるわけだ。
ライブサービスゲーム時代をどう攻略? Google Cloudの手札は
ビューザー氏は「Google自身、まさにライブサービスを長年提供してきた企業であり、膨大なユーザーを抱えている。自分たちが使い、磨いてきた技術をゲーム会社にも提供していく」と、Google Cloudがライブサービスゲームに特化したビジネスを展開する背景と強みを説明する。
特にゲーム企業の利用を意識しているサービスとしては、Kubernetesマネージドサービスである「Google Kubernetes Engine」(GKE)や、Googleが仏Ubisoftと共同で開発したオープンソースのゲームサーバオーケストレーター「Agones」、スケーラビリティや可用性に優れ、強整合性を備えたフルマネージドRDB「Cloud Spanner」、そしてもはやGoogle Cloudの看板ともいえる「BigQuery」(ビッグデータの高速処理が可能なDWH)などを挙げた。
中でもBigQueryは「実際にGoogle Cloudのユーザーであるゲーム会社は、ほとんどがBigQueryを使っている」とビューザー氏。また、一連のサービスにいち早く注目し、ライブサービスゲーム向けのモダンなクラウド環境として活用し始めたのも日本のゲーム会社という。
例えばバンダイナムコエンターテインメントがCloud Spannerを採用し、全世界300万人以上が参加するゲームを障害なく立ち上げた他、任天堂やコロプラなどもCloud SpannerやBigQueryを活用した基盤を活用している。
直近はエコシステム構築に注力 日本向けの施策は
こういった背景の日本市場でGoogle Cloudはどんな戦略を展開していくのか。直近では、プロダクトやソリューションの開発だけでなく、パートナーの拡大や教育プログラムの充実にも注力しているという。ライブサービスゲームのための「エコシステム」の構築を志向しているわけだ。
例えば3月には、ライブサービスゲームのためのクラウドプラットフォームを提供するユビタス(東京都新宿区)とパートナーシップを結んだ。ユビタスは自社サービスのメイン環境としてGoogle Cloudを採用し、ユビタスのサービスをGoogle Cloudのマーケットプレース上で提供している。
エンジニア向けの教育プログラムとして、ゲーム業界のエンジニアを対象とした招待制の特別プログラム「Expert of Google Cloud for Gaming」(E.G.G)も展開している。2020年からスタートし、日本では累計で140社700人以上が参加。約330人が認定資格を取得しているという。スキルアップの支援だけではなく、懇親会を開催するなどコミュニティーの醸成にも取り組んでいるとしている。
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