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AIは著作権を持てるか……中国でバーチャルヒューマンの「権利」を巡る初の判決:浦上早苗の中国式ニューエコノミー(2/5 ページ)
ChatGPTなどの生成AI技術に注目が集まるなか、AIを巡る知的財産権の法的枠組みの整備も急務となっている。AIを活用したバーチャルヒューマンの普及が進む中国では、バーチャルヒューマンの権利侵害を巡る訴訟で国内初の判決が下された。しかし、今回の判決では解決できない問題も残る。
商業利用広がるバーチャルヒューマン
中国では既に、数百万人のフォロワーを持つバーチャルヒューマンがSNSで活動し、企業がインフルエンサーとして起用する動きも活発化している。
有名なところでいえばアリババグループが他のIT企業と共同開発した「AYAYI」は、2021年にアリババに「入社」し、中国初のバーチャルインフルエンサーとしてルイ・ヴィトンやバーバリーなど30以上の高級ブランドと提携した。
アリババのバーチャルインフルエンサー「AYAYI」は、ポルシェのブランドアンバサダーも務める(出典:アリババニュース、2022年天猫ダブルイレブンで、バーチャルインフルエンサーが中国のデジタルネイティブ世代を魅了)
22年の北京冬季五輪時には、テンセントとバイドゥがそれぞれ手話で実況を届けるバーチャル手話アナウンサーを投入した。
バイドゥのバーチャル手話アナウンサーは、通常速度で話すアナウンサーの声に応じて手話を行い話題となった(出典:Baidu Inc.公式You Tube、CCTV and Baidu Unveil First AI Sign Language Anchor)
23年に入るとChatGPTの登場で、生成AIが一気に大衆化。対話型AIとバーチャルヒューマンを組み合わせた利用シーンの広がりも期待され、テンセントクラウドは4月に実在の人物が話している3分間の動画と100の音声素材だけで、モデルそっくりのバーチャルヒューマンを生成する技術を発表した。
マイクロソフトから独立した中国AI企業「シャオアイス(小冰公司)」も、スマートフォンで3分の動画を撮影し、数時間のトレーニングで生成できるバーチャルヒューマンの開発を進めている。
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