スラムダンク大ヒット “海賊版天国”だった中国が「本物」を買うようになったワケ(3/3 ページ)
かつて「海賊版天国」と言われていた中国だが、今は若者がコンテンツを金を払って正規版で見る動きが見られる。この動きは本物であり今後も続くのか、中国人全体の傾向としてあるのかを考察したい。
海賊版がなくなったわけではない
そうはいってもなお海賊版は多数ある。安価な劣化印刷版の海賊版書籍は(宋の時代から続くと言われ)未だ流通し問題になっているし、オンラインコンテンツに目を向ければ映画スラムダンクの海賊版が公開されるし、オンラインゲームのプライベートサーバーもあれば、ゲーム機のインディーズゲームをスマートフォン向けにそれっぽいものを開発した勝手移殖もある。
人気の日本のテレビ番組はビリビリにアップロードされるし、西洋のマイナーな映画も通称「字幕組」と呼ばれる有志により、字幕がつけられ勝手にアップロードされる。海賊版で一儲けしようとする業者は変わらずいて、儲けるためにアップロードの手口を巧妙化している。
海賊版を利用する人は変わらず利用する。しかし正規版コンテンツでしか楽しめないゲームは増え、スマートフォンやスマートテレビでの動画アプリやゲームアプリなど各種アプリにより正規版コンテンツを簡単に利用できるようになり、逆に海賊版利用は面倒くさくなった。
課金額も所得に比べれば大したことがない額にまで下がり、「ドラえもん」 「名探偵コナン」「ワンピース」「千と千尋の神隠し」「スラムダンク」といった映画で動員数が記録的に増えていった。加えてクローズなファンコミュの中で「クリエイターに金を払うのが次につながるための礼儀」だというモラルがシェアされるようになり、海賊版利用者を叱るネット空間ができあがっていた。
中国人の多くが海賊版を利用するだけでなくコンテンツにお金も落とすようになり、正規版を消費した人々が拡散し、あるいは世界のゲーム大会で台頭するようになった。正直20年前には想像もしていなかった世界だ。
世界に目を広げれば日本コンテンツが受けたマンガやアニメの海賊版被害額は約2兆円だという。他の国も中国同様変わるかといえば、正規版が海賊版以上に入手しやすくなることや、ファンの中でのモラル向上、それに(善悪はさておき)ネットの厳格管理が必要だろう。
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