「こだわりの味」を再現するために超えた壁、タイガーの「サイフォニスタ」:知らないと損!?業界最前線(3/5 ページ)
自動サイフォン式という珍しさもあって、人気のコーヒーメーカーがタイガー「サイフォニスタ」。なぜ自動コーヒーメーカーでサイフォン式を採用したのか、コーヒーの香りと味の秘訣はどこにあるのか。企画を担当したタイガーの和泉修壮さんに話を聞いた。
サイフォンを参考にした新しいコーヒーメーカー
開発当初の和泉さんは、製品のイメージはあるものの完全に言語化はできていない状態だった。開発担当とやりとりは絵に書いたり、コーヒーを実際に抽出したりして、イメージを共有することからスタートした。
「サイフォニスタという名前ですが、サイフォン式コーヒーメーカーをそのまま自動化しようとしたわけではありません。考えたのは浸漬式で美味しいコーヒーを入れること。またビジュアル面では、透明なシリンダーの中で、コーヒーが噴き上がるイメージがありました」(和泉さん)
開発の中でも、特に難しかったのがこのシリンダーだった。コーヒーが噴水のように噴き上がる様子が見えるようにするためには、シリンダーに高い透明度が求められる。しかしガラスは重い上に割れる危険性もある。樹脂にしても耐久性や耐熱性などが求められるため、かなり難航したという。
「コーヒーが出るときは噴水みたいに一気に出てほしい。ダラダラ出たら意味がない。そのためにシリンダーの設計、プログラムの改修を開発メンバーが一体になってやってくれました。途中で何度も噴き上げるのをやめようという話は出ましたし、心が折れそうにもなりましたが、みんなで完成させられました」(和泉さん)
製品になったサイフォニスタは、サイフォン式そのものを採用しているように見えるが、実は構造は全く異なっている。通常のサイフォンは上部のロートにコーヒーの粉を入れ、下部のフラスコに水を入れて加熱する。すると沸騰したお湯が上部のロートへ移動して粉が浸り、火を止めることで抽出されたコーヒーが濾過器を通って再び下部のフラスコに戻る仕組み。さらに粉が浸っている最中は、攪拌などの手作業も伴う。
これに対してサイフォニスタは、水と粉の位置が逆になっており、上シリンダーにセットした水が下のシリンダーに降りて浸漬し、再び上シリンダーに上がる構造となっている。この機構を実現するために、炊飯器やケトルなどで培った熱制御技術を応用。前例のない全く新しい構造だけに参考にできるものもなく、開発にはかなりの時間がかかったという。
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