映像制作のクラウド化に一旗揚げた「Dropbox」 コラボレーションツールで何ができる?:小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(3/3 ページ)
コロナ禍になり映像業界にもリモートワークが必要となった。複数人の共同作業が必要な現場では、リアルタイムな指示出しであればZoomなどで代替できたが、編集者が作業したものをチェックしていくケースではあまり使えなかった。こうしたなか、有望視されているのがコラボレーションツールだが、クラウドストレージで有名なDropboxも参入している。
リモートワークの落とし穴
元々リモートワークが可能な業態というのは限られており、全国を見ても東京を中心とした都心部では導入が進んだが、それでも最近はフルリモートではなく、週に数回の出勤を求めるハイブリッド型に変更するところが多いと聞く。
その理由としては、結局リモートワークとはこれまでのリアルな人間関係の「貯金」に依存しており、定期的に「チャージ」しなければならないという考え方がある。ずっとリモートワークのままでは、人間関係の貯金を食いつぶしてしまうというわけだ。
映像業界には「撮影現場」があるので、比較的集まって仕事する機会も多く、人間関係のチャージには事欠かない業界のように見える。だが編集の場合、固定スタッフではなくポスプロ請負になることも多く、前もっての人間関係のチャージがなく仕事が始まることも多い。
こうした人間関係の貯金ゼロの状態から始める業務では、リモートによるアノテーションには気をつけたいところである。これはテレビ業界に限った話ではないと思うが、ディレクションを担当する人は、しゃべりや交渉ごとが上手な人が多い。
しゃべらせれば絶好調で「コデラちゃんここんとこちょっとアレだからアレをアレしてほれ」みたいなふわっとした指示でどんどんやってしまうが、文字による指示だと妙に簡潔すぎたり、あるいは気を使いすぎて遠回しでよく分からなかったりといったことが起こる。人間関係の貯金がゼロでは「行間を読む」こともできず、修正のやりとりがいつまでも終わらないといったことも起こる。
効率化のためにリモートワークしているのに、かえって時間がかかるようでは、リモートの意味がない。これまでは当たり前のように、会えば解決していたようなことを、あらためてマネジメントする必要が出てきている。
リモートプロダクションは多くの人が手探りの最中だが、いいところだけを見ず、デメリットの部分にもきちんと注目して、パッチを当てていく必要がある。コンテンツ制作は、人と人とが才能を出し合って作っていくものであり、最良のコミュニケーションと距離感で、最良のパフォーマンスが発揮されるものだ。
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