「それ買う必要ある?」 SNSで訴える“反インフルエンサー”出現 過剰消費に警鐘
インフルエンサーがTikTokやInstagramで紹介した商品は、たちまち評判になって売り切れが続出することもあるが、そんなトレンドに水を差し「本当にそれ、必要?」と問いかける「ディインフルエンサー」が、SNSで存在感を強めている。
TikTokやInstagramのインフルエンサーが紹介するファッションやコスメ、生活用品などの一見おしゃれな商品。「必須アイテム」といわれるとついつい買わなければいけない気になってしまう――。そんなトレンドに水を差し、「本当にそれ、必要?」と問いかける「ディインフルエンサー」が、SNSで存在感を強めている。
「ディインフルエンサー」(deinfluencer)は、influencerに「離れる」「否定する」などの意味をもつ「de」の接頭語を付けた用語。CNNによると、「悦に入っているだけ、効果がない、値段に見合う価値がないとみなした商品について、購入を思いとどまらせようとするSNSの新興トレンド」という。そうした姿勢はユーザーの共感を呼び、「#deinfluencing」のハッシュタグはすでにTikTokで7億回以上視聴されている。
SNSは今や、若者に商品を買ってもらうために欠かせない宣伝媒体になった。インフルエンサーがTikTokやInstagramで紹介した商品は、たちまち評判になって売り切れが続出することもある。商品を宣伝したい企業はインフルエンサーに対価を払って使ってもらい、「商品を買えば自分が良く見られる」とフォロワーに思わせる。
インフルエンサーや企業が宣伝に利用するハッシュタグ「#TikTokMadeMeBuyIt」(TikTokに買わされた)の視聴回数は600億回以上。調査会社の米Triple Whaleによると、消費者直販ブランドが2022年4〜6月期にTikTokでの宣伝に費やした広告費は、前年同期比231%増の総額3000万ドル(約43億円)に上る。
きっかけは中国SHEINの労働環境
しかしそんな動向に対する反感が噴出する出来事があった。米国のインフルエンサー数人が中国のアパレル企業SHEINに招かれて中国の工場を訪れ、その様子を紹介する動画を掲載したことがきっかけだった。
賢いお金の使い方を自称するディインフルエンサーのKaraさんは、SHEINが労働者に過酷な働き方をさせ、環境被害を生じさせているなどと主張して(根拠は示していない)、SHEINに招待されたインフルエンサーを批判した。
SHEIN見学の動画を掲載したインフルエンサーの投稿には、人権侵害や環境破壊と結び付けて批判するコメントが殺到しているという。
もともとディインフルエンサーの多くは環境保護の観点から、ファストファッションのような過剰消費のトレンドに警鐘を鳴らしていた。インフルエンサーの売り込みによって流行が次々に移り変わり、大量消費に拍車を掛けているという主張だ。「TikTokではトレンドが超高速で動く。服やコップ、スラングまでもが流行しており、その期間はどんどん短くなっている」と米BuzzFeedは指摘する。
例えば流行アイテムにもなるプラスチック製のボトルのブームについてKaraさんは言う。「半年ごとに新しいデザインのボトルが登場して、インフルエンサーが使って見せる」「表向きは再利用可能で環境に優しいと宣伝しているけれど、半年ごとに新しいカップにすることで、他人にこれを買うよう強いている。ボトルを一つのステータスとして利用している」
この投稿に寄せられた「何で誰も何も言わないんだろうと思ってた」「このボトルがどうして『必須アイテム』なのか分からない」などの反響からは、次々に商品を買わせようとする宣伝にうんざりしていたユーザーも多かったことがうかがえる。
「インフルエンサーがみんな悪いとは思わない。でも1歩下がって商品やコンテンツ消費の在り方について考えたい」。ディインフルエンサーに共感するコンテンツクリエイターのミケイラ・メインズさんはそう話す。
ただ、中には単純に競合製品を買わせようとするだけのディインフルエンサーもいるとの指摘もある。いずれにしても、他人に影響を受けやすいフォロワーほどインフルエンサーやディインフルエンサーの言動に左右されやすい。まず何よりも、TikTokやYouTubeやInstagramで見たことを何もかもうのみにしないことが大切だと、専門家はCNNにコメントしている。
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