AIが住む町の日常を“テレビ番組化”するAI 「イーロン・マスク」名乗るキャラも登場 米国チームが発表:Innovative Tech
映像制作会社の米The Simulation(旧Fable Studio)に所属する研究者らは、テキストプロンプトに基づいてテレビ番組のエピソードを自動生成するAIショーランナーを提案した研究報告を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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映像制作会社の米The Simulation(旧Fable Studio)に所属する研究者らが発表した論文「To Infinity and Beyond: SHOW-1 and Showrunner Agents in Multi-Agent Simulations」は、テキストプロンプトに基づいてテレビ番組のエピソードを自動生成するAIショーランナーを提案した研究報告である。
このシステムでは、複数の自律的に動作するAIキャラクター(AIエージェント)が住む町がシミュレーションされ、そこで起こる出来事をもとにテレビ番組を自動生成する。脚本から音声、アニメーションに至るまで、全て自動で作られる。
研究者たちは、米国のテレビチャンネル「サウスパーク」を題材にし、シミュレーション内の1週間で起こった物語を数十分の番組エピソードに仕上げることに成功し、その有効性を示した。
「SHOW-1」と呼ぶこのシステムは、複数のAIキャラクターをシミュレーションさせるマルチAIエージェント・シミュレーションと、そこで起きる物語をテレビ番組として生成する大規模言語モデル(LLM)をカスタムした拡散モデルとを組み合わせたモデルである。
システムのマルチAIエージェント・シミュレーションは、4月に米Googleと米スタンフォード大学が発表した「Generative Agents」に基づいている。Generative Agentsは、ChatGPTなどで制御した自律的なAIキャラクター25人が1つの町で一緒に生活したらどうなるかを検証した研究である。AIキャラクター同士が情報を伝え合い、バレンタイン・パーティーを企画し、それぞれが役割を全うするなど、自律性が強調される結果となった。
拡散モデルでは、サウスパークのキャラクター約1200体と背景画像約600枚からなるデータセットで学習を行う。学習したカスタム拡散モデルは、背景やキャラクターの生成などに活用される。
ユーザーは、マルチAIエージェント・シミュレーションのUIに対して、主に使用したいキャラクターや場所を指定し、テキストプロンプトで大まかなストーリーを入力する。例えば「子供たちは、ウォールマートに新しくオープンするゲームセンターに大興奮!」というような物語の始まりを入力する。
プロンプトを入力すると、1週間(およそ3時間のプレイ時間)に起きた出来事をもとにした10〜20分ほどの番組エピソードを生成する。キャラクターや背景、脚本、アニメーション、音声まで番組に必要な全ての要素を含んでいる。
さらに、サウスパーク内のキャラクターだけでなく、ユーザー自身の画像や声のサンプルを入力することで、自分や有名人などを番組の登場人物として出演させることも可能。例えば、米X(元Twitter)のイーロン・マスク氏を名乗るキャラクターが登場する番組エピソードも作られている。
Source and Image Credits: Philipp Maas , Frank Carey, Chris Wheeler Edward Saatchi , Pete Billington , Jessica Yaffa Shamash. To Infinity and Beyond: SHOW-1 and Showrunner Agents in Multi-Agent Simulations.
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