スマホで動画視聴中に“目薬液”が飛んでくる自動点眼装置 津田塾大、「ぱちぱちドロップ」開発:Innovative Tech
津田塾大学に所属する研究者らは、スマートフォンで動画を視聴している最中に、自動で目薬を差すシステムを提案した研究報告を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
Twitter: @shiropen2
津田塾大学に所属する研究者らが発表した論文「ぱちぱちドロップ:目薬が苦手な人のための自動点眼システムの試作」は、スマートフォンで動画を視聴している最中に、自動で目薬を差すシステムを提案した研究報告である。
映像を視聴する際に目が自然に開く瞬間をカメラで検出し、そのタイミングで両目に目薬を発射する。この装置は、手動での点眼が苦手な人や困難な人が効果的に点眼できるよう設計されている。
システムは、ユーザーが動画を注視している状態や目が自然に開いている瞬間を利用しており、手動での点眼よりも不安や恐怖を軽減できる。さらに、両目を同時に点眼することで、手動による片目ずつの点眼よりも効率が良い効果をもたらす。
ハードウェアは、ユーザーがのぞく用のボックス型点眼装置、目薬を噴射するDCモーター駆動ポンプ、IoTデバイスを制御するためのハードウェアプラットフォーム「obniz Board」、スマートフォン、及び点眼開始ボタンで構成。
ユーザーがのぞくボックス型の点眼装置の奥に設置したスマートフォンは、映像を表示するとともに内蔵カメラでユーザーの目の開眼と閉眼を検出する。
点眼開始ボタンを押すと、動画を再生しシステムが起動。この段階ではまだ点眼は行われず、ユーザーの目が安定して開眼状態にあることを検出した段階で、DCモーターが駆動して目薬を発射する。点眼装置内の射出口は2つあり、目薬は両目に同時に点眼できる。ポンプが起動してから目薬が点眼されるまでの平均時間は1.8秒である。
開眼と閉眼の検出には、Googleが提供する「Teachable Machine」を用いており、開眼時の画像357枚、閉眼時の画像366枚を用いて学習している。その結果、性能評価テストにおける検出精度は100%に達している。
今後の展望としては、参加者に実際に装置を使用してもらう実験を計画している。また、動画に限らずゲーム中の利用も検討している。さらに、点眼が成功した場合に飲料などのご褒美を供給するシステムの追加も検討中である。
Source and Image Credits: 森谷 美羽, 栗原 一貴. ぱちぱちドロップ:目薬が苦手な人のための自動点眼システムの試作. 情報処理学会 エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2023論文集, 290-292, 2023-08-23
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