サブスク時代に花開く「サブスク管理サービス」 ベンダーの声から探るビジネスの着眼点:SaaS for SaaSの世界(2/2 ページ)
今回の「SaaS for SaaSの世界」では、このサブスクを支える「サブスク管理サービス」に注目。実際に製品を提供する事業者への取材を基に、ビジネスとしての特徴をひもとく。
「まだレッドオーシャンではない」 SaaS企業増でニーズも増
SaaS企業の代表格であるSalesforceが提供するSales Cloudであるが、意外にもサブスクサービスを提供する事業者への対応は十分だとは言い難い。Salesforce自身は長らくサブスクサービスを提供してきてはいるが、当初のSales Cloudの利用顧客はサブスクサービスを提供しているわけではなかったためだ。標準機能として提供されているSales Cloudの商品や価格表などの販売管理用の機能は、サブスク管理には全くもって不十分なのである。
その隙間を埋めてきたのが、前回も紹介したSaaSのサブスク管理に特化したシステムを提供する米Zuoraである。エンタープライズ企業を中心に今でもZuoraはこの分野の圧倒的なシェアを持っているといわれているが、Zuoraの機能は日本の商習慣には馴染まないものも多く、日本企業のためのサブスク管理システムが望まれていた。
そこにビジネスチャンスを見いだし、提供を開始したのがソアスクだ。帳票サービスとの分野とは異なり、サブスク管理サービスはシステムの構造もはるかに複雑で参入障壁が高い。同社の吉田順一取締役も、現時点ではまだレッドオーシゃンにはなっていないと意気込む。
また、オプロはそれまで自社サービスの導入をインプリベンダー(システムの導入を請け負う事業者)経由で行うことが多かったが、ソアスクにおいては自社でオンボーディング(導入支援)部隊を抱えて支援を実施している。これはサブスクビジネスの構造はかなり複雑であると同時に、事業者によって多種多様なパターンが存在するため、機能だけを提供するのでは不十分だったためという。
ITの次は“モノのサブスク”へ
オプロはモノのサブスクへの対応も見据えていると吉田順一取締役。サブスクといえばITサービス(無形商材)というイメージが強いが、産業機械や医療機器などの高額な事業向けから、家電や家具、車などの一般向けまでモノ(有形商材)のサブスクも拡大傾向にある。
モノのマーケットサイズはITサービスとは比較にならないほど大きく、これらが近年急速にサブスクサービスに取り組み始めている。一方で、サブスク管理は単純に利用料を毎月徴収するだけではなく、契約状況などの複雑な管理を半永久的に行う必要があり、売り切り型の商材を長年提供してきた企業にはまったくノウハウがない。
オプロは、帳票サービスを提供することで培ってきたモノのビジネスに関するノウハウと、ソアスクで培ってきたサブスク管理に関するノウハウを掛け合わせて、モノのサブスク管理サービス「モノスク」の提供を始めている。
サブスク管理の仕組みを自社で構築しようとすると膨大な時間とコストがかかるが、モノスクを使えば最短3カ月で立ち上げることができ、在庫管理や契約管理などの情報を集約することで業務効率も大幅にアップさせることができるという。単にサブスク管理の機能を提供するだけではなく、危機管理や作業指示・報告などの機能もワンパッケージに。これからモノのサブスクサービスを始める事業者にとっての安心感も意識しているという。
デジタルシフトの過渡期、サブスク管理サービスのこれからは
オプロの祖業は帳票サービスであるが、ソアスクやモノスクも含めて販売管理サービスも拡大し、売上規模は半々のところまできているという。コロナ禍を契機として企業のデジタルシフトの機運は高まってはいるが、すべてが業務がデジタル上で完結する状況が数年で実現できるわけではない。
請求や契約がすべてデジタルで完結する企業もあれば、顧客への説明が難しかったり、移行へのコストを捻出できなかったりして未だに紙での処理が必要な企業も多い。デジタルインボイス導入についての議論も始まっているが、全面的な移行まではまだかなりの時間がかかるだろう。
日本企業のデジタルシフトはまさに今が過渡期である。デジタル活用がない状態で業務をすることも考えられないが、すべてがデジタルで完結もしないため、帳票サービスに対するニーズはまだ根強くある。一方で、デジタルシフトの過程で世の中にサブスクサービスが受け入れられ始めている。サブスクに対応できる販売管理サービスへのニーズはこれからも増えていくだろう。
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