鼻歌で演奏する「ウルトラライトサックス」、その仕組みと狙い
ソニーが「CEATEC JAPAN 2023」に出品して注目を集めた「ウルトラライトサックス」。鼻歌を歌うだけで演奏できるサックスとはどんなものなのか。
ソニーは幕張メッセで開催中の「CEATEC JAPAN 2023」で、鼻歌を歌うだけで誰でも奏でられるサックス「ウルトラライトサックス」を出品した。誰でも簡単に演奏できる「ゆる楽器」だという。
ウルトラライトサックスでは、複雑なキー操作やテクニックは一切必要ない。それどころか、強く息を吹き込んだり、楽器を指で押さえたりする必要すらない。必要なのは鼻歌だけ。老若男女誰でも演奏できるという。
サックスの形状をした本体には、マイクやスピーカーの他、ソニーのボードコンピュータ「Spresense」(スプレッセンス)を搭載している。マイクが拾った鼻歌からリアルタイムに音程を検出し、それをサックスの音に変換する仕組みだ。
Spresenseは、電池で駆動する低消費電力でありながら、GPS受信機能やマイク入力、ハイレゾリューションオーディオコーデック、ClassDアンプなどを搭載。主に監視カメラやドローン、スマートスピーカーなどIoT用途を想定していたが、それに「ゆる楽器」が加わった。
ソニーはゆる楽器のさらなる拡大を目指し、楽器向けにSpresenseの拡張基板を作った。ライブラリなどの提供もあわせ、「誰でも簡単に楽器を作れるキット」として今後提供する考え。「ゆるコア」と名付けた。
「ゆるスポーツ」の団体が楽器に取り組んだ
ゆる楽器を提唱しているのは「世界ゆるミュージック協会」。年齢や性別、運動神経にかかわらず誰でも楽しめる「ゆるスポーツ」を70以上も開発したクリエイター集団「世界ゆるスポーツ協会」が母体となり、その知見を楽器にも生かそうと2019年に設立した。
協会の代表を務めるのは、「あなたが生まれなければ、この世に生まれなかったものがある。」(アミューズメントメディア総合学院)などのコピーを手がけたコピーライターの澤田智洋さん。協会の活動に共感、協力する企業も多く、これまでに様々な企業と新しいスポーツと楽器を生み出してきた。
ソニーグループはアクセシビリティ(機器を容易に利用できること)の取り組みの一環として参加した。中でも音楽を扱うソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は積極的で、ゆる楽器の開発の他、ゆる楽器によるコンサートや教育プログラム、ハッカソンなども主催している。
「私なんて才能がないからとか、騒音が気になるとか、楽器を“自分のせい”にしてできていないということも多いと思うが、(われわれは)“難しく見せている楽器が悪い”という逆転の発想のもと、誰でも演奏できて、誰でも楽しく合奏できる“ゆる楽器”を開発している」(SME)──鼻歌で演奏するサックスには、そんな思いが込められていた。
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