テスラ車に潜む「ファントムブレーキ」という“幻影” オーナーが実際に体験した一部始終:走るガジェット「Tesla」に乗ってます(3/3 ページ)
「iPhoneにタイヤをつけたようなクルマ」と表現されるTesla。この未来からやってきたクルマを連載形式でリポートします。今回は、関越道で自動緊急ブレーキを食らった話、Teslaの自動運転、「Hey Siri」でModel 3を操作する、といった3件のネタを取り上げます。
関越自動車で「ファントムブレーキ」に遭遇
FSD BETAを紹介した直後にオートパイロット(現状の運転支援機能)の欠点について書くのも気が引けますが、これもTeslaの現実です。
この夏、久しぶりにファントムブレーキを短期間に3回体験しました。ファントムブレーキというのは、オートパイロット作動中に、何の前触れもなく自動ブレーキが作動することです。「ファントム=幽霊を察知」が語源のようです。
3回中2回は、ガラスルーフに吸盤型ホルダーで装着したGoProで撮影していたので、詳しくご紹介します。最初は関越道でのことです。82km/hで走行車線を走行中、突然、警告音と共に自動ブレーキが作動し、一瞬にして69km/hまで減速しました。自動ブレーキはそこで勝手に解除されましたが、慌ててアクセルを踏んで80km/hに戻しました。
数字にするとたった13km/h減速しただけですが、一瞬の急減速なので、つんのめり感があり、筆者も同乗者も驚いたことは確かです。後から、スクリーン映像を確認すると、前方にそれまで存在しなかった、ワンボックス型のクルマのオブジェクトが突然、一瞬だけ赤色で警告表示され、すぐに消えています。まさにこの瞬間にファントムブレーキが発生しています。
その次の事例では、渋滞気味の横浜新道を38km/hで走行中、ファントムブレーキが発生し一瞬にして27km/hまで減速しました。このときも減速感はかなりのものでした。
映像を確認すると、ガードレールで区切られた歩道を歩行者が歩いています。スクリーン上の映像では、最初は前方を向いて歩いていたのが、次の瞬間、人物が回れ右をして、車道に向かって横断するかのような姿勢で赤色警告表示されています。まさにこの瞬間にファントムブレーキが発生したのですが、すぐにアクセルを踏んで加速しました。
関越道のファントムブレーキについては、同乗者が、右から黒いビニールのようなものが飛んで来て横切ったと証言しています。筆者は気が付きませんでしたし映像でも確認できませんでした。
もし、黒いビニールが本当なら横浜新道の歩行者の事例と併せて、幽霊を認識したのではなく、そこに実在する物体を誤認識した上で、その挙動を誤って予測したことになります。
ユーザーとして、このような自動緊急ブレーキをどう捉えたらよいのか悩めるところです。自動緊急ブレーキがちゃんと機能する安全側に振ったフェイルセーフの証しと考えるべきか、あくまでも誤作動であり、あってはならないことなのか……
Teslaは、10月中旬のアップデートでミリ波レーダーの機能を無効化し、カメラ映像(Teslaビジョン)だけで運転支援を機能させるように変更しました。そうなると、件のファントムブレーキ発生時(8月)は、ミリ波レーダーが有効だった可能性があります。ただ、誤認識がミリ波レーダーに起因するのか否かは、市井の1ユーザーにはうかがい知れません。
この原稿を書いた後、Teslaビジョンによるオートパイロットが、かなり優秀になったことを実感する経験を何度かしました。それが、ミリ波レーダーを無効化したからかどうかは分かりませんが、ある程度「ネタ」がそろった時点でその様子を本連載で報告したいと思います。
ファントムブレーキにまつわる話として、ミリ波レーダーとカメラの2系統からの情報処理の是非について、自動車経済評論家の池田直渡氏が、「テスラビジョンへの移行は正しいのか?」で、高度で的確な解説をしているので参考にしてください。
オートパイロットの誤作動の情報はTesla側でどしどし吸い上げていただき、8月末から稼働を開始した世界有数の処理能力を誇るTeslaのスーパーコンピュータで、運転支援の学習に役立てた上で将来のアップデートに反映してもらいたいものです。
著者プロフィール
山崎潤一郎
音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla
関連記事
- Tesla、独自設計の完全自動運転プロセッサを発表 2020年には“ロボタクシー”事業開始へ
Teslaが自動運転の取り組みについてのイベントを開催し、独自設計のプロセッサを披露した。製造はSamsungが行い、既にMoxdel Sなどに搭載されている。マスクCEOは、2020年には完全自動車による配車サービスを開始するとも語った。 - Tesla、自動運転ソフトの安全性に関する懸念で36万台をリコール
Teslaは、自動運転機能「FSD β」搭載の36万台以上をリコールする。米運輸省道路交通安全局によると、人間のドライバーが介入しないと衝突事故が発生するリスクが高まるという。 - TeslaのマスクCEO、「FSD」を9月に(また)値上げするとツイート 1万5000ドルに
Teslaの「フルセルフドライビング(FSD)」の価格が従来の1万2000ドルから1万5000ドルに値上げされる。イーロン・マスクCEOがツイートで発表した。値上げは9月5日のアップデートに合わせて実施する計画。 - Tesla Model Sの炎上事故、自動運転ではなかった可能性ありとNTSB
Teslaの「Model S」がカーブを曲がりきれずに木に衝突し、炎上した事故を調査中の米国家運輸安全委員会(NTSB)が予備報告を公開した。再現テストでは、自動運転を有効にできなかったとしている。 - Tesla、「Model S」のアプリ更新で自動運転機能「Autosteer」を追加
電気自動車のTesla Motorsが「Model S」のアプリをバージョン7にアップデートし、自動運転、自動車線変更、自動駐車機能を追加した。ほぼ完全自動で走行できるが、ドライバーはハンドルに手を添えておく必要がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.