欧州委員会、Appleに約2900億円超の制裁金 Appleは控訴へ Spotifyは「小さな一歩」
欧州委員会は、Appleに18億ユーロ(約2900億円)超の制裁金を科すと発表した。Spotifyからの提訴を受け、2020年からアプリ内課金システムの制限について調査していた件の結論だ。Appleは控訴すると発表した。
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は3月4日(現地時間)、米AppleがApp Storeを通じてiPhoneおよびiPadユーザー(以下「iOSユーザー」)に音楽ストリーミングアプリを配信する市場における支配的地位を乱用したとして、同社に18億ユーロ(約2900億円)を超える制裁金を科すと発表した。
欧州委員会は、Appeがアプリ開発者に対し、アプリ外で利用できる代替の安価な音楽サブスクサービスについてiOSユーザーに通知することを妨げる制限(アンチステアリング)を適用していたことが判明したとしている。
EUがAppleに独禁法違反の制裁金を科すのはこれが初。制裁金としては過去最大レベルだ。
欧州委員会は2020年、スウェーデンSpotifyがAppleによるアプリ内課金システムの制限について同委員会に提訴したことを受け、調査を開始した。
欧州委員会は、Appleの違反行為は10年近く続き、「Appleが開発者に課した高額な手数料が、さらに高額な手数料という形で消費者に転嫁されていたため、多くのiOSユーザーが音楽ストリーミングのサブスクリプションに非常に高額な料金を支払うことになった可能性がある」と結論付けた。
Appleは即日声明文を出し、「われわれは欧州委員会を尊重するが、事実は委員会の決定を裏付けるものではない。Appleは控訴する」と語った。
「この決定の主な支持者であり、最大の受益者はスウェーデンのストックホルムに拠点を置くSpotifyだ」「現在、Spotifyは欧州の音楽ストリーミング市場で56%のシェアを持っている」が、「Spotifyを世界で最も有名なブランドの1つにするのに貢献したサービスに対し、Appleには何も支払っていない」と主張した。
Spotifyのダニエル・エクCEOはXのアカウントで「欧州委員会がついにAppleに不利な判決を下した」とポストし、この件についての同氏の考えを動画で語った。エク氏は、この決定は正しい方向への一歩ではあるが、「非常に小さな一歩にすぎない」とし、その理由として、Appleはこれまで、日本や韓国などで敗訴したが、「裁判所の精神には従っていない」ことと、Appleが最終的にDMA(デジタル市場法)を回避し続ける可能性があることを挙げた。
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