「時間はあまりない」 日産とホンダが提携発表を急いだ理由
日産自動車と本田技研工業は15日、クルマの電動化や知能化に向けた戦略的パートナーシップの検討を始めると発表した。スケールメリットを生かして競合に対抗する狙い。
日産自動車と本田技研工業(ホンダ)は3月15日、クルマの電動化や知能化に向けた戦略的パートナーシップの検討を始めると発表した。急速に変化する自動車市場で、世界3位(ホンダ)と7位(日産)の自動車メーカーが手を組み、スケールメリットを生かして競合に対抗する狙いがある。
具体的な協力分野として、車載ソフトウェアプラットフォームやBEVのバッテリー、コアコンポーネント(eAxleと呼ばれるモーターやインバーター、ギアなどのパッケージ)などを挙げる。ただし現状は「検討する合意をした段階」(本田技研工業の三部敏宏社長)であり、決まったことはない。資本提携などの話も「一切ない」という。
三部社長によると、両社が話を始めたのは今年の1月中旬。その後、約2カ月で数回の会合を重ね、うまくいく感触を得たという。内田社長も「課題認識や思いを共有できた。早く検証したいので会見を開いた」と話す。つまり今回の発表には、両社の議論を「フルオープン」にして加速させる意図があった。
今後、両社は複数のワーキンググループを設け、短期間で方向性を検討する考え。「悠長に構えている余裕はない。電動化、知能化に必要な技術開発を全て自社だけでやるのは難しい。幅広い範囲で協業の可能性を探り、実行できるところは実行していく」(内田社長)。
戦う相手は自動車メーカーだけじゃない
話し合いで両者が認識を共有し、アライアンスを急ぐ理由になった課題とは何か。1つは電動化や自動運転技術の進歩に伴い、ソフトウェア開発が重要になったこと。もう1つは異業種から参入してきた新興メーカーの存在だという。
「全く新しい競争に挑むことになった。戦う相手は自動車メーカーだけじゃない。新興メーカーが圧倒的なスピードで席巻しようとしている。ビジネスモデルも違う。これまでの手法、常識に縛られていては太刀打ちできない」(内田氏)。
2023年の自動車メーカー別の世界シェアでは、9位に中国BYD(比亜迪)が入っている。1995年創業のバッテリーメーカーは、そのノウハウを生かして2003年に自動車産業に参入し、わずか20年で世界のトップ10に食い込んだ。8位は韓国のkiaで、どちらも7位の日産とは市場占有率では1%未満の差しかない。
三部社長は「グローバルで自動車産業を取り巻く環境は大きく変わっている。新興企業の攻勢に対応できない企業は淘汰される」と話す。「われわれは2030年ごろにもトップランナーでいたいと思っている。少なくともトップグループと互角に戦うためにはスケールメリットが重要。とくに電動化、知能化ではコスト低減効果が大きい」。そして2030年にその位置にいるためには「今の判断が重要」なのだという。
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