何が変わる? 「次期Suica」大刷新の中身 タッチいらずのウォークスルー改札はどう実現するのか(4/4 ページ)
JR東日本が、「次期Suica」に関する展開計画を発表した。“タッチなし”で改札を通れる「ウォークスルー改札」や、「位置情報乗降システム」「サブスクリプション」「Suicaエリア統合」などの新サービスを予定している。今回、JR東日本に問い合わせて細かい事情が確認できたので、現時点でどういった変化が起きるのかの情報をまとめておく。
磁気切符廃止は近郊区間のみ
先ほども触れたが、JR東日本を含む首都圏の鉄道会社8社は24年5月に連名で、磁気乗車券を廃止してQRコード切符に置き換える計画を発表している。
磁気切符は自動改札機のメンテナンスも切符そのものの処分コストもかかる点で会社の負担が大きく、QRコードをベースとした切符に移行していこうというものだ。QRコード切符の仕組みについては前述の通りだが、複数の会社をまたいでの運用では「特定のユニークIDの移動情報を、全ての“連絡する”会社の間で共有しなければならない」という問題がある。
特に関東地方では鉄道各社が地下鉄を介して相互直通運転を行っている関係で、磁気切符についても複数の会社をまたいだ「連絡切符」のようなものが存在しており、この処理のために連絡する各社が単一の管理サーバを立て、共同運用する必要がある。これが8社連合のプレスリリースでうたわれていた内容のポイントだ。
今回のJR東日本の発表ではQRコード切符についての話題には直接触れていない。ただ同社によれば、26年度末以降に順次サービスを開始する予定としているが、対象となるのはあくまで近郊区間の領域に限定され、指定席券売機などで発行する中長距離乗車券や磁気定期券についてはその仕組みを継続していくと述べている。
クレカの“タッチ乗車”は「現時点で導入の考えなし」
もう1点重要なのが、QRコード切符については東京近郊区間で連携する鉄道会社8社で協調していくことを表明する一方で、現在東京メトロや東京都営交通を含む私鉄各社で24年度末以降に導入が計画されている「クレジットカードを利用したタッチ乗車(オープンループ)」について、現時点で導入の考えはないと断言している。
「当社としては『Suicaエリアの拡大』『モバイルSuica』『新幹線eチケットサービス』『地域連携ICカード』『他の交通系ICカードとの相互利用』などによって、Suica1枚で新幹線・在来線を含む鉄道、バス等の交通機関をご利用いただけるようにしてきており、現時点で導入する考えはありません」(JR東日本広報)
ただ、現状でSuicaカードの販売制限があるなど、特に増え続ける海外からのインバウンド客への対応が追い付いていないという問題もある。これについては既存の「Welcome Suica」のほか、新たに始める「Welcome Suica Mobile」を通じてApple Payに登録した海外クレジットカードからシームレスな決済が可能なサービスを提供することで対応するとしている。
Welcome Suica Mobileは現在、iPhone利用に限定されている。これは、海外で販売されるAndroid端末にはモバイルSuica導入に必要なFeliCa SE(セキュアエレメント)が搭載されていないことによるとみられ、この点を考慮すればQRコード切符を海外利用客にもシンプルに利用できる仕組みを用意すべきではないだろうか。
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