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“着るペルチェ水冷”の実力は? 「ChillerX」を着て畑仕事をしたら、秋を感じた小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

7月に入り、メッセージには熱中症警戒アラートがバンバン飛び込んでくる。今年も本格的に暑さ対策が必要な季節がやってきた。その中で、シフトールから発表された「ChillerX」は、夏場の屋外作業やアウトドア活動を視野に入れたガン冷えガジェットである。どれほど冷えるのか、新たな方式「ペルチェチラー」の実力を試してみた。

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どういう用途が想定されるか

 コントローラーによって、MaxとEcoの2モードが切り替えできる。ただしモードを切り替えても、「バー……」というポンプ音は変わらない。ペルチェの冷却温度が変わるだけである。

 バッテリーは、今回2万5000mAhの比較的大容量のものを使用したが、Maxモードで連続使用した場合、およそ1時間20分程度でカラになった。Ecoモードでは、同容量バッテリーでおよそ2時間半だそうである。つまりMaxとEcoでは、持続時間が約2倍違うわけだ。

 体感としては、屋外作業であればMaxモードは必須のように感じられる。一方屋内作業では、Ecoモードでも十分だろう。

 消費電力を測定してみたところ、Maxモードでは約44Wで動作していた。一方Ecoモードは、44Wから5Wの間で変動していた。おそらくポンプの消費電力が5W程度ということだろう。ペルチェは間欠で動かす事で、冷却力を調整しているものと思われる。

 製品の構造上、腰部背面にユニットが来ることになる。また背面に向かって排気することから、椅子に座る仕事ではほぼ使用できない。パイプ椅子のように背もたれがあるだけで腰部が空いているような椅子なら、使用できないこともない。だが背もたれ部分によりかかると冷却シートが潰れて水が循環できなくなってしまうので、基本的には立ち仕事用だと思った方がいいだろう。

 道路工事や警備、農作業など、屋外での立ち仕事には便利だ。ただ上から制服を着用しなければならない場合は、ベスト部は覆っても問題ないだろうが、腰部のユニット部が隠れないよう露出しておかなければならないのが難しいところである。

 屋内作業者では、料理人など火を扱う仕事の人達には便利だろう。エアコンが効いていても、火や窯を扱う仕事は放射熱があるので、やはり暑い。1時間に1回程度は休憩するだろうから、その時にバッテリーを交換するという事になるだろう。

 なお構造的には電源さえ確保できれば、連続動作には問題ないそうである。ひも付きでもよければ、(メーカー非推奨だが)USB-Cの延長ケーブルを使って大容量ポータブルバッテリーにつなぐという手もありそうだ。

 筆者も屋外作業経験がそこそこあるほうで、さまざまな冷却グッズを試している。空調服は、汗をかいたあとにそれを気化させることで、気化熱を奪うという仕組みである。そのため、汗をかかないと効果がない。また外気温があまりにも上がりすぎると熱風を吹き込むことになり、一定のところで効果が逆転するポイントがある。

 水冷ベストも試してみたが、これは水が体温レベルまで暖まるまでは割とあっという間で、その後は効いてるんだか効いてないんだかよく分からない状態になる。また気温が体温よりも暑い場合には、効果がなくなる。

 やはり強制的に一定温度にするという構造を持つものが、一番強力である。その点においてペルチェの利用は、理にかなっている。ChillerXは冷却面積が広いので、上半身の冷却効果はかなり高い。交換バッテリーがいくつもいる点については、最低2個あれば使っている間にもう一つを充電して交互に使うという方法でやりくりできる。

 一方で、固定用ベルトを4本使わなければならず、構造が複雑で装着に手間がかかる。また冷却システムを取り外してベストの洗濯が必要など、メンテナンスに時間が取られるところは弱点だろう。ただ、そもそも冷却ベストも同じようなものなので、それで不便を感じていない人には、ChillerXも受け入れられるだろう。

 いずれにしても、世界で類を見ない異常な暑さを更新し続ける日本において、暑さ対策のさまざまな選択肢がどんどん登場してくるのは、頼もしい限りである。今後も多くのメーカーの参入、改良、競争に期待したい。

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