AIパワー注入で日本語入力はこう変わる――文脈を読み取って変換する「azooKey on macOS」を試す:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
進化するAIを十分に生かせていなかった分野が日本語入力システムだ。そんな中、AI技術を全面的に活用した、オープンソースの日本語入力システム「azooKey on macOS」が登場した。今回はそのα版をテストしながら、AI日本語入力の可能性を探る。
日本語入力を、どう助けるか
入力システムとしての基本機能はすでに実用レベルであり、漢字変換の正しさもかなり高確率で正解を出してくる。ただ弱点がないわけではない。
文書作成とは、迷いなしに一気に一文を書き切ることは少なく、実際には一旦入力を確定したあと、読み直してみて部分的に助詞を修正したりということが起こる。
こうした時には、間違えた部分のみを細切れで差し込み入力するわけだが、そうした時の変換効率がガクッと落ちる。単にひらがなで良かったのに、第一候補に変な漢字を出してしまうことが多い。ユーザーが何をしたいのかを、文章内のどこに差し込もうとしているのかで予測してくれるようになると、さらにいいだろう。
そのほか、これは弱点とは言えないかもしれないが、iOSなどのモバイル系で主流の、入力の途中でその先の候補を出してくれる、予測変換機能がない。したがって全文を最後まできっちり打たなければならず、定型文の入力などにはあまり向かない。
また入力ミスがあっても、多分こう入力したかったんだろうなと勝手に推測して正しく変換してくれる機能もない。したがってタイプミスがあると、変換がガタガタになるという現象が起こる。
上記のような弱点に関しては、すでにATOKでは解決済みで、そこはさすが開発歴が長いだけのことはある。ATOKは1発で正しい変換を出すこともさることながら、人間のミスや誤認、無知による問題は避けられないという前提で、修正をどれだけ救っていくかという方向性が強い。とはいえazooKeyはまだα版であり、今後まだまだ発展の余地はあるだろう。
AIと日本語文章の関係においては、AIに指示して、内容まで含めてそれっぽい文章を作らせるという方向へ伸びようとしている。一方自分でオリジナルの文章を作成しなければならない人の補助ツールという方向性は、今のところ手薄である。前者はプロデューサー的視点であり、後者はクリエイター的視点だ。どちらの立場の人間も社会には必要なのであり、AIは両方に対して支援してくれるツールであるべきだ。
azooKeyは後者のアプローチを取るプロジェクトであり、その成果は今後の日本語入力に大きな影響を与えるものと思われる。
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